プラスチック・リサイクル関連の特許出願、欧州発が約3割を占める

(EU、欧州)

ブリュッセル発

2021年10月20日

欧州特許庁(EPO)は10月19日、2010~2019年に出願された「プラスチック・リサイクル技術」および「バイオプラスチック関連技術」に関する特許について分析した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。出願数を国・地域別でみると、両分野とも欧州と米国で全体の約60%を占め、欧州ではドイツが最も多かった(添付資料図1、2参照)。

同報告書によると、プラスチック・リサイクル技術の分野では、ケミカル・リサイクルとバイオロジカル・リサイクルを用いた関連技術が最も多かったが、接触分解や熱分解といった従来の標準的なケミカル・リサイクル関連技術の出願数は2014年にピークに達した。代わって、バイオロジカル・リサイクルの中で、有機物を利用する方法やモノマー(注)へのリサイクル(plastic-to-monomer recycling)などが増加傾向にある。これらの技術はポリマーを分解し、新品に近いプラスチックを生産できる可能性を持つ。また、ケミカル・リサイクルとバイオロジカル・リサイクルともに基礎研究が果たす役割が非常に大きく、出願数全体の約20%は大学または公的研究機関による出願が占めた。大学・研究機関からの出願の地理的内訳をみると、米国と欧州が同率で29%だった。しかし、スタートアップまたはスケールアップ企業からの出願数をみると、米国が欧州の約4倍と圧倒的に多く、EPOは「欧州では基礎研究は非常に盛んだが、産業への応用という点ではその可能性を生かし切れていない」と指摘している。

リサイクルがより容易な新たなプラスチック関連の出願が急速に増加

バイオプラスチック関連技術の分野では、産業部門別でみると、欧州のプラスチック需要全体の3%未満を占めるにすぎない、ヘルスケア部門からの出願数が最も多かった。このほか、バイオプラスチック関連の特許出願数が全体の約32%と最も高い割合となった化粧品・洗剤部門や、包装、電化製品、テキスタイル部門からの出願も多かった。

報告書ではまた、「リサイクルがより容易な新たなプラスチック設計」に着目し、出願数は2010年以降、毎年約10%ずつ増加していると指摘。関連技術は航空宇宙、建設、運輸、風力発電のタービン、マイクロエレクロトニクスへの応用が期待されている。同分野での出願数の急速な増加の背景には、「動的共有結合」(自己修復性を持ち、耐久性が高いプラスチック物質設計を可能とする方法)でのイノベーションの増加がある。EPOによると、日本がこの分野で先導的な地位にあるものの、欧米の大学・公的研究機関からの特許出願が大半を占めているという。

(注)モノマー(単量体)とは、ポリマー(プラスチック)を構成する最小の単位のこと。

(滝澤祥子)

(EU、欧州)

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