2050年に水素輸出50億ドル目指す、政府がロードマップ発表

(コロンビア)

ボゴタ発

2021年10月14日

コロンビア政府は9月30日、米州開発銀行(IDB)と共同でまとめた水素戦略に関するロードマップを発表した。パリ協定に基づき、国が決定する貢献(NDC)として「2030年までに温室効果ガスの排出を51%削減、2050年カーボンニュートラル」を掲げている。ロードマップは目標達成に向けた中長期戦略として、以下の4本柱で構成している。

  1. 水素の製造:豊富な天然資源を有するコロンビアは、長期的なブルー水素(注1)供給を保証できる。炭素税の引き上げや、CCUS〔二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留〕への優遇措置などにより、鉱業部門のエネルギー転換加速とブルー水素製造を後押しする。風力発電と太陽光発電のポテンシャルが大きい国内北部を中心に、グリーン水素(注2)製造開発も推し進める。
  2. 水素の国内利用と輸出:国内では現在、製油所を中心にグレー水素(注3)が年間150キロトン利用されている。今後、低炭素水素(注4)への切り替えとトラックやバスでの需要開拓を進め、2030年には低炭素水素の年間需要120キロトン、2050年には1,850キロトンを目指す。また、2050年低炭素水素輸出額50億ドルへ向け、港湾インフラの整備や輸入国との2国間協定を拡大する。
  3. 2030年目標と2050年への野心:2030年までにグリーン水素製造の発電設備容量を3ギガワットに拡大し、製造コストをキロ当たり1.7ドルへ引き下げる。ブルー水素製造量は年間50キロトンを目指す。需要面では、燃料電池自動車と水素ステーションの普及を促進する。これらのプロジェクトにかかる推定投資額は25億~55億ドル。また、2050年までにグリーン水素の輸出を開始し、海上・航空輸送の脱炭素化、製鉄プロセスや鉱山トラックでの水素利用も進める。
  4. 政府の行動方針:政府は低炭素水素市場発展のため、規制整備、エネルギー転換への優遇措置、製造と消費を促進するための仕組みづくり、インフラ整備への支援、技術や関連産業の開発の促進を行う。

コロンビアでは、2018年に国内2カ所、発電容量30メガワット程度だった太陽光・風力発電設備が2020年には約7倍の規模まで成長した。政府は、現在、電源構成全体の0.2%にとどまる風力・太陽光発電の割合が2022年には12%に拡大すると見通しており、再生可能資源の開発に伴って水素社会実現への加速も期待される。

(注1)天然ガスや石炭などの化石燃料を分解して生成される水素。生成される二酸化炭素(CO2)は大気中に排出される前に回収される。

(注2)水を電気分解して生成される水素。分解に再生可能エネルギー由来の電力を利用することで、CO2を排出しない。

(注3)ブルー水素と同じ方法で生成されるが、CO2を回収せずに大気中に放出される。

(注4)グリーン水素やブルー水素など、製造過程でCO2が排出されない、または排出量の少ない水素。

(茗荷谷奏)

(コロンビア)

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