IMFの世界経済見通し、2021年を5.9%に引き下げ

(世界)

国際経済課

2021年10月13日

IMFは10月12日、「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。2021年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を5.9%、2022年を4.9%とした(添付資料表参照)。前回(2021年7月)の見通し(2021年7月28日記事参照)と比較すると、2021年を0.1ポイント下方に修正した。2022年の見通しは据え置いた。

世界全体では小幅な下方修正にとどまったが、一部の国では大幅に修正した。供給混乱を一部反映した2021年第2四半期の在庫の大幅な減少や第3四半期の消費の鈍化を理由に、米国の見通しを1.0ポイント引き下げた。米国の見通し引き下げが大きく影響し、先進国・地域の2021年の見通しは0.4ポイント下がった。

他方で、新興・途上国・地域の2021年の見通しを0.1ポイント上方に修正した。中南米、中東・中央アジア、サブサハラアフリカは一次産品輸出の改善を一部反映したこと、また、欧州の新興・途上国・地域では想定よりも強力な内需を背景に、上方に修正した。中国は公共投資が想定よりも小さいこと、また、中国とインド以外のアジア新興・途上国・地域は新型コロナウイルス感染のパンデミックの影響から、それぞれの見通しを下方に修正した。

「見通し」は、パンデミックの継続やインフレの見通し、さらには国際的な金融状況の変化による高い不確実性の影響を受けると指摘。短中期的には、上振れよりも下振れするリスクが大きい。主な下振れリスク要因として、(1)伝染力や致死率のより高い新型コロナウイルス変異株の出現、(2)今後も続く需給のミスマッチ、インフレ圧力、想定よりも速い金融政策の正常化、(3)金融市場の変動、(4)米国の財政パッケージの規模縮小、(5)社会不安の拡大、(6)気候変動による災害の頻発(ショック)、(7)サイバー攻撃、(8)特に米中間での貿易と技術に関する緊張関係の高まりを挙げた。

上振れリスクについては、(1)新型コロナワクチンの生産と流通の迅速化、(2)生産性の急増を挙げた。生産性の急増については、パンデミックは自動化の推進と、技術活用によって実現可能となったリモートワークなどによる職場の変革を通じて、多くの業種で変化を加速させていると指摘。これらの変化が、生産、流通、支払いシステムでの生産性成長を加速させ得る点に言及した。

(朝倉啓介)

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