米財務省、経済制裁の改善が必要との検証報告書を公表

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月20日

米国財務省は10月18日、米国の経済・金融制裁に関する包括的な検証結果をまとめた報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。報告書の作成には、財務省の元高官や国務省、司法省、国際開発庁、議会関係者および産学や同盟・友好国など多数の利害関係者が関わったとしている。なお、検証の対象は財務省主体の制裁のみで、国務省によるビザ制限や商務省による輸出管理などは含まれていない。

報告書は検証結果について、制裁は不可欠で効果的な政策ツールである一方、新たな課題に直面していると総括している。具体的には、サイバー犯罪や戦略的・経済的な競争相手の存在、さまざまな主体からの競合する需要により制約を受ける労働力や技術的インフラに加えて、制裁が人道的支援に与える影響を最小限に抑える必要性などを挙げている。それらを踏まえた今後の改善の方針として、次の5点を挙げている。

  1. 明確な政策目的に直結した制裁体制を構築すること。
  2. 可能な限り多国間の調整を行うこと。
  3. 意図していない経済的、政治的、人道的悪影響を最小限に抑えるよう制裁を調整すること。
  4. 制裁が容易に理解され、執行可能で、場合によって撤回可能なことを確実にすること。
  5. 財務省の制裁関連のテクノロジー、人材、インフラを現代化するための投資を行うこと。

財務省は、敵対国や幾つかの同盟国が既に米ドルの利用を減らして、国際取引における米国金融システムへの露出度を下げている点などを指摘し、改善を進めるに当たっては、米国の金融制裁の効果に甚大な影響を与える、国際的な金融体制の進化に遅れを取らないようにすべきと警鐘を鳴らしている。

米国の制裁法令に詳しい米国の法律事務所は、今回の報告書に関して、改善策は一般的かつ抽象的な内容にとどまっており、制裁法令の施行現場で直ちに変化がもたらされるかは不透明としている。他方、少なくともバイデン政権下では、国際経済、貿易、取引の実態に顕著な悪影響を及ぼすような単独での制裁措置を取る前には、同盟・友好国と緊密な調整を行うよう努める姿勢は期待し得るとしている。

(磯部真一)

(米国)

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