英政府、秋季予算案・歳出計画を発表

(英国)

ロンドン発

2021年10月29日

英国のリシ・スーナック財務相は10月27日、秋季予算案および2021年の歳出(見直し)計画(Spending Review)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。新型コロナウイルス感染拡大により打撃を受けた同国経済が予想以上の回復をみせる中、公的支出の拡大とともに、税負担緩和措置の実施を発表した。

スーナック財務相は同27日の議会での演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、「新型コロナ禍」における政府の雇用対策の成功を強調。英国予算責任局(OBR)は同日、2021年のGDP成長率を3月時点の予測4%から6.5%に上方修正し、2022年初めには新型コロナウイルス感染拡大前の経済水準に回復するとの予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表。OBRはさらに、2020年7月時点で最悪のシナリオにおいて約12%と予測した2020年の失業率についても、この冬がピークで5%強にとどまると予測している。

また、次に訪れる危機に備え、同相は上述の演説で、財政運営における2つの原則、「公的部門(除くイングランド銀行)の純債務のGDP比低下」および「平時においては将来の成長と繁栄のための投資に限り借り入れを行う」を示した。

公的支出拡大の一方、税負担の緩和措置も

今般の歳出計画では、健康と国営医療サービス(NHS)への公的支出について拡大の意向を示した。具体的には、国営医療サービスのデジタル技術の最新化などに向け、今後3年間で計59億ポンド(約9,204億円、1ポンド=約156円)を投資。高賃金かつ高スキルの雇用創出に向けて、研究開発(R&D)への投資額も、2024~25年に200億ポンドにまで増額させる。R&D関連の税控除と併せた政府のR&D支援額は、GDP比で2018年の0.7%から2024~2025年には1.1%にまで上昇する見込みとしている。

法定最低賃金に関しても、2022年4月1日から引き上げ、23歳以上の時給は現行の8.91ポンドから6.6%増の9.5ポンドとなる。そのほか、地域活性化についても、インフラ改善プロジェクト支援に向けた総額48億ポンド規模のレベリング・アップ・ファンドの1回目拠出(計17億ポンド)などが予定されている。また、「新型コロナ禍」での財源確保のために一時的に引き下げていた政府開発援助(ODA)拠出(2020年11月27日記事参照)についても、2024~25年に国民総所得(GNI)比で0.7%に戻す方針だ。

他方、計画では、税負担の緩和措置も多く含まれる。ビジネスレート(非居住用資産に対する固定資産税)については、増税をさらに1年間凍結するとともに、イングランドの小売業やサービス業、レジャー産業の企業向けには50%減税する。また、銀行業に適用されるサーチャージ(追加税率)が2023年4月より現行の8%から3%に引き下げられるほか、燃料税の税率の凍結の維持などが計画されている。

(尾崎翔太)

(英国)

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