アイルランド、OECD枠組みにおいて最低法人税率15%に合意

(アイルランド)

ロンドン発

2021年10月12日

アイルランド政府は10月8日、法人税の最低税率を15%とすることを、「BEPS(税源浸食と利益移転)に関するOECD/G20包摂的枠組み」での議論において合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

背景には、OECDでの新たな国際課税ルールをめぐる議論がある。アイルランドは当初、この新ルールに難色を示していたと報じられた(「ガーディアン」紙10月7日)。しかし、パスカル・ドノフー財務相は10月7日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、(同じく難色を示していた)米国でOECDでの議論と一致する税制変更の議論が進められていることや、OECDの声明文案から最低法人税率に関して「少なくとも15%」の「少なくとも」の文言が削除されたことで15%より高くなる可能性がなくなったことなどの理由により、合意に至ったとしている。

ドノフー財務相によると、この合意によって、売上高7億5,000万ユーロ以上のアイルランドの多国籍企業56社とアイルランドに拠点を置く外資系多国籍企業1,500社に対して、15%の法人税率が適用される。一方で、売上高7億5,000万ユーロ未満のアイルランドの16万社余りについては、法人税率は現行の12.5%から変更はない。政府は今回の合意が、経済のデジタル化に伴い、国際的な税の枠組みが多国籍企業のビジネスモデルに対応できないという問題を解決するための重要な一歩となるとした。

アイルランドは、過去18年間実施してきた低法人税率政策を背景に、ファイザー、インテル、ヤフー、リンクトイン、TikTok、アップル、IBM、ツイッターなど、科学技術、金融、製薬分野の約1,000社の多国籍企業を誘致してきた(「ガーディアン」紙10月7日、2021年9月10日記事参照)。これらの多国籍企業がアイルランド経済に占める重要性は高く、アイルランド歳入庁の5月の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、わずか上位100社で税収の80%近くを占めているとしている。

アイルランド政府産業開発庁(IDA Ireland)CEO(最高経営責任者)のマーティン・シャナハン氏は10月7日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、税率変更には一定の理解を示しつつ、「アイルランドに対する投資家の信頼は依然として高く、同国の外国直接投資(FDI)の基盤に悪影響を及ぼすことはない」と述べた。また、ドノフー財務相も10月7日の声明で、新たなルールの導入後も世界的な多国籍企業誘致の競争力を維持できると発言し、自信をのぞかせた。

OECDの10月8日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、この合意は10月13日のG20財務相会合および月末のG20首脳会議に提出される予定。各国は2022年中の多国間条約の締結、2023年の発効を目指す。

(島村英莉、尾関康之)

(アイルランド)

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