ニューサウスウェールズ州、水素戦略を発表

(オーストラリア)

シドニー発

2021年10月14日

オーストラリア最大都市シドニーを州都とするニューサウスウェールズ(NSW)州政府は10月13日、同州の水素戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。同戦略によって800億オーストラリア・ドル(約6兆7,200億円、豪ドル、1豪ドル=約84円)以上の投資を呼び込み、脱炭素化を促進して、エネルギーと経済のリーダーとしての地位確立を目指す。

オーストラリアでは、連邦政府が2019年に国家水素戦略を打ち出したほか、各州・準州政府が独自の水素戦略を公表しているが(注1)、NSW州で水素戦略が策定されたのはこれが初めて。NSW州では既に、イラワラやハンターバレーでの水素ハブの構築に7,000万豪ドルの拠出をコミットしているが、同戦略ではさらに、グリーン水素(注2)製造事業者に対して、課徴金の免除や電力ネットワーク接続料の90%免除などのインセンティブを付与するほか、水素補給ステーションの設置を拡大するなど、最大30億豪ドルの奨励策を盛り込んだ。これらの取り組みを通じて、NSW州政府は、2030年までにグリーン水素の生産規模を年間11万トンまで拡大し、グリーン水素の生産コストを1キログラム当たり2.80豪ドル以下に抑えることを目指す。また、水素産業の確立によって、NSW州の経済規模は2030年までに6億豪ドル以上拡大し、最大1万人の雇用を創出することができるという。

なお、NSW州政府は9月29日、2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で50%削減するという新たな目標を打ち出した。そのほかの州では、南オーストラリア州が2030年までに2005年比で50%以上削減、ビクトリア州が2030年までに同40~50%削減を目標に掲げているほか、全ての州・準州政府が2050年までに排出実質ゼロを目指す方針を打ち出している。ただし、連邦政府は「可能な限り早く、できれば2050年までに排出実質ゼロを目指したい」と述べるにとどまっており、産業界からもカーボンニュートラル達成に向けた具体的な目標の設定を求める声が高まっている。

(注1)水素産業に関するオーストラリアの政策やプロジェクトの概要については、調査レポート「オーストラリアにおける水素産業に関する調査(2021年3月)」を参照。

(注2)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素を排出しない。

(住裕美)

(オーストラリア)

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