日系含む自動車メーカー12社、米議会にEV税額控除法案見直し求める書簡提出

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月04日

トヨタなどの日系メーカーを含む自動車メーカー12社は9月30日、ナンシー・ペロシ米国下院議長に対し、現在議会で審議されている、電気自動車(EV)購入時の税額控除額引き上げに関する法案(2021年9月16日記事参照)に対し、見直しを求める書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を提出した。同法案は、1台当たりの基本控除額4,000ドルと、バッテリー容量に応じた3,500ドル(注)に加え、労働組合を持つ拠点で組み立てた車両の購入に対してさらに4,500ドルの控除を定めている。そのため、デトロイト3以外の労働組合を持たないメーカーから不服の声が上がっている。

今回の書簡に参加したのは、トヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダ、三菱自動車、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツ、ボルボ、現代、起亜の12社。書簡では、米国における12社のこれまでの投資活動は合計980億ドルに上り、直接雇用は13万1,000人、間接雇用では210万人近くに達しているとし、2020年には米国から135以上の国々に65万台以上を輸出したことなど、米国経済への貢献を強調している。また、12社による新車販売は全体の55%以上を占めるなど市場への影響が大きいことにも触れ、今回の税額控除額引き上げ案は、米国の自動車労働者を差別し、消費者の選択肢を狭め、米国内のEV普及とバイデン政権が掲げる気候変動目標の達成を遅らせることになると訴えた。

12社のほか、主に外国メーカーの車両販売店を代表する米国国際ディーラー協会も「この政策は、米国の労働者を互いに対立させ、消費者の選択を制限する」とし、反対の意を示す書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を提出した。さらに、米系3社を含むほぼ全ての自動車メーカーを代表する自動車イノベーション協会(AAI)も、2030年に販売される新車の50%をゼロエミッション車にするというバイデン大統領の目標を達成するためには「われわれはインセンティブが全てのメーカーに適用でき、企業を区別せず、広く利用可能なことを保証する必要がある。それによって、全てのモデルと価格帯でより多くのEVが市場に登場し、消費者の選択肢が維持される」とし、インセンティブの一律化を求める姿勢だ(「オートモーティブ・ニュース」9月19日)。

一方、全米自動車労働組合(UAW)のレイ・カリー会長は、30日に発表した声明で「この法案はUAWの家族にとって重要であり、補助金を縛ることで、納税者の資金が国内の自動車やバッテリーの組み立てに使われるようにし、これらの仕事が給与のよい組合員規模の仕事だと確認することで、われわれの未来を守ることができる」と述べ、議会に対し、修正することなく同法案を可決するよう要請した。

(注)2026年12月31日以前に販売される車両の場合は、バッテリー容量40キロワット時(kWh)以上、2027年1月1日以降販売の車両は50kWh以上が対象。

(大原典子)

(米国)

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