気候関連のTCFDの提言に基づく情報開示企業が増加

(世界)

国際経済課

2021年10月20日

国際機関・金融安定理事会(FSB、注1)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は10月14日、「2021年版現状報告(2021 Status Report)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。TCFDは、FSBによって2015年に発足した、気候関連の情報開示や金融機関の対応を検討するタスクフォースで、提言を通じて投資家や保険会社などに向け、企業がどのような内容を開示情報に盛り込むべきかを明示した。10月時点で世界の2,600以上の企業・機関がTCFDの提言に賛同を表明している。

今回の報告では、8セクター(注2)、69カ国・地域、1,651件の企業報告について人工知能(AI)を用いて(注3)、11の開示推奨項目(注4)ごとに分析した。その結果、調査対象企業の75%の企業がTCFDの提言に沿った情報開示を行っていたことがわかった。開示企業数の増加幅は2019年から2020年にかけて9ポイント高く、2018年から2019年にかけての増加幅に比べて4ポイント高かったという。開示内容については、2020年は11項目中平均で3項目の情報開示が行われており、2018年の11項目中平均2項目に比べ増加していた。また、開示項目のうち「戦略」に該当する自社のビジネス・戦略・財務計画における気候変動に関するリスクと機会の説明を行っている企業が半数を上回った。企業の所在地別では、欧州企業による開示が件数・増加幅ともに高かった。

さらに、TCFDは、意思決定に役立つ情報開示を支援する追加文書(付属書)も発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。付属書の改定は2017年の最終版提言レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に合わせた2017年版の付属書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の発表以来、初となる。具体的には、付属書Cの「全セクターに対するガイダンス」と、付属書Dの「金融セクターに対する補足ガイダンス」について、開示項目のうち「戦略」と「指標と目標」部分を更新した。

「全セクターに対するガイダンス」の「戦略」分野では、財務パフォーマンスにおける気候変動関連の課題の影響(収益、コストなど)や財務ポジション(資産、負債など)を示すことを新たに求めた。「指標と目標」の改定では、産業横断的な気候変動関連の指標と目標の追加、企業の重要課題評価とは独立したスコープ(注5)1と2の温室効果ガス(GHG)排出量の開示、スコープ3のGHG排出量の開示、中期または長期の目標達成に向けた中間目標の追加を求めた。なお、2017年版と2021年版の付属書の変更については、該当箇所をまとめた資料も公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)している。

(注1)9月末時点で主要26カ国・地域の中央銀行や金融監督省庁、IMF、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECDなどの代表が参加。国際金融システムの安定のための協調促進などを目的に活動する組織。

(注2)8セクターは、銀行、保険、エネルギー、資材・建物(化学、金属・鉱業、建築資材、不動産とその開発、資本財など)、輸送・輸送機器、農林水産品、技術・メディア、消費財(小売り、テキスタイル・アパレル)。

(注3)厳密には、AI技術の変化のため、2018~2020年の分析結果を直接比較することはできない。

(注4)TCFDでは、気候変動がもたらすリスクと機会に関わる(1)ガバナンス、(2)戦略、(3)リスク管理、(4)指標と目標について、財務報告などによって開示することを提言している。(1)~(4)はそれぞれ具体的に開示を求める情報を定義しており、合計11の項目がある。詳細は「2021年版現状報告」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の27ページ参照。

(注5)スコープ(Scope)はGHGプロトコルによって定義された、事業者のCO2排出範囲のこと。詳細は環境省の「サプライチェーン排出量とは」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(柏瀬あすか)

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