政府による国民世論調査で経済・社会政策の正当性に支持

(ハンガリー)

ブダペスト発

2021年10月01日

ハンガリー政府は9月14日、7月~8月末にかけて実施した国民世論調査(2021年で2度目)の結果を発表した。最低賃金の引き上げや子育て世帯支援、税制などの経済的なトピックと、移民や新型コロナウイルス対策、EU関連の社会的なトピックなど、設問(全14項目)は多岐にわたった。回答は全有権者の約18%(約142万人)にとどまったものの、いずれの設問でも、政府が掲げる政策に対して圧倒的に支持する結果となった。

家計や企業の活動に関係する設問と回答の内容は以下のとおり。

「最低賃金を月額20万フォリント(約7万2,000円、1フォリント=約0.36円)まで引き上げること(2021年9月28日記事参照)は必要か」という質問に対し、回答者の94%が可能な限り早く引き上げるべきと答えた(選択肢は「可能な限り早く引き上げるべき」と「今は必要ない」の2つ)。

「経済危機に直面している時は、家計への支援金や年金の給付を削減せず、また、雇用関連税を低く維持することを憲法で保護すべきか」という質問には、98%がすべきと回答した(選択肢は「憲法で保護を義務付けるべき」と「憲法上の保護は不要」の2つ)。

子育て世帯に対する個人所得税還付(2021年度GDP成長率5.5%以上の条件付き)の提案には、95%が賛成した(選択肢は「子育て世帯には個人所得税を還付すべき」と「追加的支援は必要ない」の2つ)。

「多国籍企業の活動による環境破壊や気候変動から発生する費用を、光熱費料金の引き上げを通して家計に負担させるべきとするEUの方針をどう考えるか」という質問には、99%が家計ではなく企業に支払わせるべきと回答した(選択肢は「環境破壊を起こした代償は多国籍大企業が払うべき」と「環境破壊の代償は家計が負担しなければならない」の2つ)。

政府広報担当のセントキライ・アレクサンドラ氏は9月8日、SNSを通じて「政府は常に世論調査を参考にして議題を取り上げ、決定事項が報告される」と述べた。今回の国民世論調査は2010年から政権を握っている与党による11回目の国民世論調査で、政府は国民が意思決定に関与できるよう意見を求めているとしている。しかし、限定的な回答の選択肢によって、世論が政策を支持しているという論調を意図的に作り出そうとしているという見方もある。

(バラジ・ラウラ、清部陽介)

(ハンガリー)

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