米民間調査、新型コロナで米国世帯の約2割が貯蓄を全て失ったと報告

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月20日

米国のナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)とロバート・ウッド・ジョンソン財団、ハーバード大学公衆衛生大学院は10月12日、共同で実施した調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、新型コロナウイルス感染拡大による経済的困難によって米国の世帯の19%が貯蓄を全て失ったとの結果を明らかにした。調査は8月2日から9月7日の間、全米の18歳以上の3,616人を対象にインタビュー形式で実施した。

調査によると、少なくとも1つの経済的困難に「直面した」と答えた割合は全体で38%だが、年収5万ドル未満の世帯では59%、5万ドル以上の世帯では18%と、世帯収入による差が明らかになった。特に、世帯収入が年間5万ドル未満の世帯では、貯蓄を全て失ったと回答した割合が30%に上るのに対し、5万ドル以上の世帯では9%にとどまった。

また、子供がいる世帯で、仕事をしなければならない際に託児施設の確保に「深刻な問題が生じた」と回答したのは全体で20%だが、年収5万ドル未満の世帯では27%、5万ドル以上の世帯では14%となった。

過去数カ月に直面した深刻な経済的困難の内容としては、「クレジットカードやローン、そのほか負債の支払い」が22%で、「医療費の負担」17%、「公共料金の支払い」16%が続いた。「医療費の負担」に関連して、18%の世帯が「経済的困難により必要なときに医療の提供を受けられなかった人がいる」と回答しており、結果として健康に悪影響が生じたと回答した割合はそのうちの76%となった。

そのほか、67%がここ数カ月の政府からの財政的援助によって助けられたと回答しているが、「大いに役に立った」は23%にとどまり、「少し役に立った」44%で、「役に立たなかった」は33%に上っている。

調査により、低・中所得層を中心に多くの世帯が新型コロナウイルスの影響で経済的困難に直面しており、これまでの支援策に必ずしも満足していないことが浮き彫りとなったが、連邦政府・議会は、低所得者向けの勤労所得税額控除や、児童税額控除の拡大、子育て・教育支援策などの政策を柱とする3兆5,000億ドル規模の投資計画を成立させようと審議を続けている(2021年10月5日記事2021年7月16日記事参照)。IMFは10月13日に公表した財政監視報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、3兆5,000億ドル規模の投資計画の基となっている「米国家族計画」について(2021年4月30日記事参照)、上記のような政策が実現すれば、米国の貧困率(注)は新型コロナウイルス感染拡大前の10.5%から7.6%に低下する見込みと試算している。同投資計画は規模の縮小も模索されているが、家計支援策がどの程度の規模で着地となるかが注目される。

(注)国勢調査局が定める年間所得の基準額を下回る世帯人口の割合。基準額は世帯の構成によって異なり、4人家族(18歳未満の子供2人)の場合は2万6,246ドル(参照表エクセルファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 38a516bfa056cf30