欧州中銀、金融緩和政策を維持、インフレ率上昇は一時的との見方

(EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2021年10月29日

欧州中央銀行(ECB)は10月28日、ドイツ・フランクフルトで開催した政策理事会後の記者会見で、新型コロナウイルス緊急対策として打ち出した資産購入プログラム「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」を1兆8,500億ユーロの規模で少なくとも2022年3月末まで、あるいは政策理事会が「新型コロナ危機」が収束したと判断するまで継続する方針を維持すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、政策理事会は前回(2021年9月10日記事参照)の方針を維持し、PEPPを通じた購入は、2021年の第2四半期および第3四半期よりも低いペースで継続した場合でも良好な資金調達状況を達成できる、と判断した。

また、これまでと同様、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)を0.00%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)を0.25%、預金ファシリティー金利をマイナス0.50%にそれぞれ据え置いた。また、政策理事会は、予測期間(2021~2023年)中にインフレ目標2%を達成したとしても、期末以降も中期的にインフレ率が2%に安定すると判断するまでは、政策金利は現在またはそれ以下にとどまるとの見方を示した。また、インフレ率が目標の2%を一時的に超えて推移することも容認した。

2021年9月のインフレ率は6月の1.9%から3.4%となり、目標を上回ったが、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は記者会見で、現在のインフレ率上昇は当初の予想より長く続くものの、一時的なもので、2022年中には低下する見込み、との見方を示した。現在のインフレ率の上昇の要因として、(1)エネルギー価格の高騰、(2)経済回復に伴い需要が供給を上回っていること、(3)ドイツの付加価値税減税の終了に関連する反動のベース効果を挙げた。

さらに、ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)についても、毎月200億ユーロ規模の購入を継続する。これまでと同様、資産購入については政策金利の緩和効果を強化するために、主要金利の引き上げ開始前まで継続し、APPの下で購入し保有する債券・国債の再投資については、主要政策金利の引き上げ開始以降も必要な限り続ける方針をあらためて示した。

(ベアナデット・マイヤー)

(EU、ユーロ圏)

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