欧州中銀、新型コロナパンデミック緊急購入プログラムのペース減速

(EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2021年09月10日

欧州中央銀行(ECB)は9月9日、ドイツ・フランクフルトで開催した政策理事会後の記者会見で、新型コロナウイルス緊急対策として打ち出した資産購入プログラム「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」を1兆8,500億ユーロの規模で少なくとも2022年3月末まで、あるいは政策理事会が新型コロナ危機が収束したと判断するまで継続する方針を維持すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。他方で、資金調達環境とインフレ見通しを踏まえ、政策理事会はPEPPを通じた購入は、過去2四半期より低いペースで継続した場合でも良好な資金調達状況を達成できると判断した。

このほかの金融緩和政策については現状維持とした。政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)は0.00%でこれまでと同様、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)を0.25%、預金ファシリティー金利をマイナス0.50%にそれぞれ据え置いた。さらに、ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)での毎月200億ユーロ規模の債権・国債の購入も継続する。資産購入については、政策金利の緩和効果を強化するために、主要金利の引き上げ開始前まで継続し、APPの下で購入して保有する債券・国債の再投資については、主要政策金利の引き上げ開始以降も必要な限り続ける方針をあらためて示した。

クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は記者会見で「ユーロ圏の経済回復がますます進んでおり、2021年内にパンデミック前の水準を上回る見通しだ」とした。一方「パンデミックの悪化や供給不足が予想以上に継続し、生産を抑制した場合、経済見通しが悪化する可能性がある」と指摘した。

2021年の予測は改善、2022・2023年の予測にあまり変更なし

記者会見に合わせて発表したユーロ圏に関するECBスタッフマクロ経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、2021年の実質GDP成長率を前回(2021年6月)予測値の4.6%から5.0%に上方修正した(添付資料表参照)。2022年は0.1ポイント下方修正し4.6%、2023年は2.1%の予測を維持した。また、消費者物価指数上昇率については、2021年は前回の1.9%から2.2%に上方修正し、2022年は1.7%、2023年は1.5%との予測を示した。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

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