米8月の非農業部門雇用者数、デルタ株感染で市場予想を大きく下回る、失業率は5.2%に改善

(米国)

ニューヨーク発

2021年09月07日

米国労働省が9月3日に発表した8月の非農業部門の雇用者数は前月から23万5,000人増で、市場予想(72万人増)を大きく下回った。失業率は5.2%で、市場予想と同じだった(添付資料図、表1参照)。失業者数が前月から31万8,000人減少したことに加え、就業者数が50万9,000人増加したことにより、失業率は前月(5.4%)から0.2ポイント改善した(2021年8月10日記事参照)。

失業者のうち、一時解雇を理由とする失業者数は前月(123万9,000人)より1万3,000人増加して125万2,000人、恒常的な失業者数は前月(293万人)より44万3,000人減少して248万7,000人となった。

労働参加率(注)は前月と同じ61.7%だった。失業給付などの手当により職探しを行わない人の増加が指摘されているが、8月の労働力人口は前月から19万人増加している。

平均時給は30.7ドル(7月:30.6ドル)と、前月比0.6%増(7月:0.4%増)、前年同月比4.3%増(7月:4.1%増)で、ともに伸びが増加した。

8月の非農業部門の雇用者数の前月差は23万5,000人増と前月(105万3,000人増)から大きく減少した。7月から8月にかけての雇用増減の内訳をみると、民間部門は24万3,000人増で、そのうち財部門が4万人増となり、製造業で3万7,000人増加の一方、建設業は3,000人減とわずかに減少している。サービス部門は20万3,000人増で、主に対事業所サービス(7万4,000人増)、運輸倉庫業(5万3,200人増)、教育・医療サービス業(3万5,000人増)などが堅調に推移した。一方、小売業が2万8,500人減と2カ月連続の減少となったほか、これまで雇用回復を牽引してきた娯楽・接客業が増減なしと大きく失速しており、特に、新型コロナウイルスのデルタ型変異株の感染拡大により、飲食サービス業が4万1,500人減少したことが響いた。政府部門も、8,000人減とわずかながらも減少している。(添付資料表2参照)。

8月の人種別の雇用状況について、白人4.5%(前月4.8%)、アジア系4.6%(前月5.3%)、ヒスパニック・ラテン系6.4%(前月6.6%)と前月から回復したが、黒人は8.8%(前月8.2%)と悪化している。

米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長はジャクソンホール会議で、2021年内の量的緩和縮小開始を示唆するとともに、デルタ株の感染拡大をリスクとし、今後のデータを引き続き見極めると述べた(2021年8月30日記事参照)。8月の雇用統計の数値が予想を大きく下回ったことから、緩和縮小の開始が遅れるのではという声が出始めている。パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン氏は「デルタ(株の感染拡大)以前は、秋には100万人の雇用増が見込まれていたが、今はこれが困難な状況になった。このような不透明な雇用情勢では、パウエル議長は緩和縮小を急がないだろう」と述べている(ブルームバーグ電子版9月3日)。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(宮野慶太)

(米国)

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