投資委員会、温室効果ガス削減事業に新たな恩典承認
(タイ)
バンコク発
2021年09月10日
タイ投資委員会(BOI)は9月7日、温室効果ガス(GHG)排出量削減にかかる新たな奨励恩典を承認したほか、次世代自動車製造に関する恩典の拡充も発表した。持続可能な開発に資する事業を奨励し、政府が掲げるBCG(バイオ、循環型、グリーン)経済を推進する狙い。詳細は今後の布告やBOIの追加発表を待つ必要があるが、現時点で公表された事項は以下のとおり。
1.温室効果ガス削減事業への恩典
(1)恩典対象業種を追加:二酸化炭素(CO2)を再利用した天然ガスプラント事業の法人税を8年間免除(注1)
(2)既存恩典への追加:
- GHG削減を目的とする設備機械入れ替え:投資額の50%を上限に法人税を3年間免除。同恩典は既存の「生産性向上のための投資奨励措置」に追加する。
- 環境配慮型農業に取り組む地方組織への支援を地域経済投資奨励恩典に追加(従来は協同組合や企業のみ支援対象、注2)。さらに、本措置に基づいた恩典申請期限を2021年末から2022年末までに延長する。
(3)対象業種の条件と恩典を修正:
- 環境配慮型の自然冷媒を利用した冷蔵施設・輸送事業:法人税を3年間免除(従来は恩典なし)
- CO2を再利用した石油化学製品の製造事業:法人税8年間免除(従来は5年間免除、注3)。
2.次世代自動車製造などへの恩典
(1)対象業種の範囲を拡大:次世代自動車製造の恩典対象を車両製造に加え、エネルギー貯蔵システム、充電モジュール、フロントおよびリア・アクセルモジュールなどで構成されるバッテリー電気自動車(BEV)プラットフォーム(注4)にも拡大。
(2)恩典対象業種を追加:電気自転車(Eバイク)製造事業の法人税を3年間免除。
3.新型コロナウイルス関連の追加恩典:BOI恩典を得ている企業が公的機関や研究機関のワクチン・医薬品研究開発事業に財政支援する場合、支援額が事業開始当初3年間の総売り上げの1%以上、または2億バーツ(約6億8,000万円、1バーツ=約3.4円)以上である場合、追加的に法人税を最大3年間免除し、法人税免除の上限額を支援額分引き上げる。支援額が上記基準に達しない場合、法人税免除期間は追加しないが、法人税免除上限額を支援額分引き上げる。
(注1)二酸化炭素回収・貯留(CCUS)技術を利用した天然ガス分離プラントが条件。
(注2)具体的には、関連機関もしくは 地方自治体に登録し、包括的水資源管理の目的で農業や農産加工、軽工業、地域観光事業のいずれかの事業を営む協同組合やコミュニティー企業が対象。
(注3)CCUS技術を利用した石油化学製品の製造が条件。
(注4)動力のエンジンやモーター、自動車の基盤部分(足回りや車体を除く)で、エンジン車用の既存プラットフォームではなく、EV専用開発されるもの。
(田口裕介、今泉美里)
(タイ)
ビジネス短信 d9f57b6f154a54f7