2021年のGDP成長率予測、3.2%に下方修正

(スイス)

ジュネーブ発

2021年09月24日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は9月16日の発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、2021年の実質GDP成長率予測(注:スポーツイベントが現在の予定どおり開催された効果を織り込んだ数値)を見直し、前回の3.6%から3.2%に下方修正した(添付資料表参照)。

3月初旬以降、新型コロナウイルス対策の規制措置が段階的に緩和されたことに伴い、スイス経済は急速に回復し、夏には「新型コロナ危機」以前の水準を上回った。一方、世界経済の回復ペースは一時的に鈍化している。原材料不足や輸送能力の不足により国際的な工業生産が低下し価格を押し上げているほか、多くの国では今なお厳しい感染防止対策が実施されており、サービス部門の回復を妨げている。

SECOは、スイス経済の回復基調は続くと見込む。観光業などサービス部門の回復にはまだ時間を要するが、営業停止などの厳格な措置がとられない限り景気回復は続き、個人消費や投資、輸出の増加に牽引されて、スイス経済は過去の平均を上回るペースで成長するとの見方を示した。今回の発表で、2021年のGDP成長率予測は6月予測の3.6%から3.2%に下方修正されたが、これは2020年のGDP成長率が速報値のマイナス2.9%から最新値のマイナス2.5%に改善したことに起因しているとした。

またSECOは、世界経済は2022年にかけて本格的な回復が見込まれるとしている。世界規模の原材料不足や輸送能力の不足が解消され、新型コロナウイルス感染状況も徐々に収束することで、経済活動が正常化すると予測される。景気回復は観光業などサービス貿易にもおよび、内需と貿易の増加が大幅な成長につながる。こうした見方から、SECOは2022年のスイスのGDP成長率を6月予測の3.3%から3.4%に上方修正した。

SECOは労働市場について、時短労働が徐々に減少し、失業率が急低下すると予測し、2021年の年間平均失業率を3.0%、2022年を2.7%とした。消費者物価指数については6月の予測を若干上方修正し、2021年を0.5%、2022年を0.8%とした。

ただし、SECOは、パンデミックの進展が経済の後退要因となるリスクは除外できないとし、既存のワクチンが効かない新たな変異株などの発現により規制措置が強化された場合などには経済回復が大幅に妨げられるとした。また、生産能力が回復せず、インフレ圧力が長期金利の上昇を伴う持続的な価格上昇をもたらす場合には景気回復が鈍化すると予測。このようなシナリオでは政府や企業の債務拡大リスクや、金融市場や不動産市場で大幅な価格調整が進むリスクが大幅に高まるとした。一方で、「新型コロナ危機」の間に積み上がった家計貯蓄が個人消費に向かい、スイスや他の先進国の経済が予想を上回るペースで回復する可能性もあるとした。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際スポーツイベントの本部が置かれているため、オリンピック、サッカーのワールドカップ、欧州選手権の開催年には、放映権収入がGDPを押し上げ、翌年のGDPにはマイナスに作用する。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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