バイデン米大統領、アフガニスタンでの戦争終結を宣言

(米国、アフガニスタン)

ニューヨーク発

2021年09月01日

米国のジョー・バイデン大統領は8月31日、国民向けの演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行い、アフガニスタンでの戦争の終結を宣言した。米国時間の前日にはアフガニスタンからの米軍撤退は完了していた(2021年8月31日記事参照)

バイデン大統領は約30分に及んだ演説で、アフガニスタンから期限どおりに米軍を撤退させ、20年続いた戦争を終結させた自らの判断は正しかったと強調した。冒頭では、これまでに米国人約5,500人を含めた12万人以上の人々をアフガニスタンから退避させることに成功したとし、「歴史上どの国もこれほどのことを成し遂げたことはない」と、米国が主導した救出作戦の成果を述べた。一方、100~200人ほどの米国人(注1)がまだ残っているとし、出国を希望する場合は期限を設けずに支援するとした。

バイデン大統領は8月31日までの米軍の完全撤退にこだわった点について、ドナルド・トランプ氏が大統領当時にタリバンと交わした合意(注2)を守って撤退するか、軍隊を増派するかの選択しかなかったとした上で、増派は米国の国益にならないと判断し、撤退を決めたと説明した。また、トランプ前大統領がタリバンと合意した撤退期限を延期したのは、より多くの人々を救うためだったとした。国益に関しては、中国との競争激化やロシアとも多面的な課題などがある中で、米国がアフガニスタンから抜け出せない状況が続くと、その間にそれら国々がより力をつけることになるだろうとして、地政学的な要因も指摘した。演説の終盤では、この戦争で投じられた2兆ドルを超える支出と死傷した多数の人々に言及し、小規模でリスクが低く、低コストに収まる戦争などあり得ないと述べ、撤退が最良の判断だったと繰り返した。

米主要紙は演説直後、野党・共和党や一部の民主党議員がバイデン大統領の対応を批判している点に触れつつ、「バイデン、アフガニスタン戦争終結の判断を猛烈に弁護」(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版)、「バイデン、アフガニスタン撤退を弁護」(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版、「バイデン、アフガニスタン撤退は成功だった」(「ワシントン・ポスト」紙電子版)とのタイトルで要旨を報じた。

(注1)アフガニスタンに残っている米国人のほとんどは、米国とアフガニスタンの二重国籍やアフガニスタンに家族のルーツを持つことを理由に、残ることを早期に決めた人とされている。

(注2)同合意では、米軍の完全撤退を2021年5月1日までとしていた。

(磯部真一)

(米国、アフガニスタン)

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