米軍のアフガニスタン撤退が完了、今後は外交的関与に注力

(米国、アフガニスタン)

ニューヨーク発

2021年08月31日

米国防総省は8月30日(米国時間)、アフガニスタンからの米軍撤退が完了したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、米国にとって最長となった20年にわたる戦争が終わった。

アントニー・ブリンケン米国務長官は30日夜、今後のアフガニスタンへの関与の方針について会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。その中で、ブリンケン長官は「米国にとって、アフガニスタンへの関与の新たな章が始まった。それは外交が牽引するものだ」と強調。その第一歩として、カブールでの外交機能を停止し、それをカタールのドーハに移転すると発表した。その上で、国際社会と協力して、アフガニスタンに残る米国市民や米国に協力してきたアフガニスタン人らで国外退去を希望する者を引き続き支援し、タリバンの監視、対テロの取り組みを行っていくとした。その1つの成果として、国連安全保障理事会で同日、タリバンに対して、出国希望者の安全な国外退去や人道支援へのアクセスを許可するよう求める決議を採択したことを挙げた。

タリバンが8月15日に首都カブールを制圧して以降、アフガニスタンでは出国希望者の救出作戦が混迷を極めていた。24日にはG7首脳会議が急きょ開かれ、米国に対して英国などが米軍の撤退延長を求めたとされるが、その後もバイデン政権は、31日までの米軍撤退を目指すとしていた(2021年8月26日記事参照)。そのような中、26日にはカブール国際空港の周辺で「イスラム国」系の過激派組織によるテロ攻撃により、米兵13人を含む多数の死者と負傷者が出た。これに対して、バイデン政権は27日に報復攻撃を行っていた。

バイデン政権のアフガニスタン撤退の判断に対して、野党・共和党議員は批判を強めている。下院共和党トップのケビン・マッカーシー議員(カリフォルニア州)は米軍撤退完了の報道の直後に、「バイデン大統領はテロリストのために米国民をアフガニスタンに置き去りにしようとしている。ペロシ下院議長(民主党)は、全ての米国民が(アフガニスタンを)脱出できるまでバイデン大統領による米兵撤退を禁じるべく、議会を招集すべきだ」と批判。また、下院の元軍人議員とのラウンドテーブルを主催し、出国を望む米国市民・永住者がアフガニスタンを脱出するまで、米兵の撤退を禁じる法案に速やかに投票を行うべき、との主張を展開した。上院共和党トップのミッチ・マコーネル議員(ケンタッキー州)も30日に自身のツイッターで、「われわれが戦闘を止める判断をしたからといってテロリストが消えるわけではない。彼らはバイデン大統領のひどい政策判断により、大胆になり活力を取り戻すだろう」と指摘した。

(磯部真一)

(米国、アフガニスタン)

ビジネス短信 5b2b1742547cff4d