第2回サプライチェーン強靭化フォーラム開催、日豪印ASEANでサプライチェーンのDX活用議論

(日本、インド、オーストラリア、ASEAN)

アジア大洋州課

2021年09月21日

ジェトロは9月17日、日本とオーストラリア、インド、ASEANの産官学が参加する「第2回サプライチェーン強靱化(きょうじんか、SCR)フォーラム」をオンライン開催した。新型コロナウイルス禍によって世界中でサプライチェーン(SC)の途絶リスクが顕在化した中、2020年9月には日豪印の経済担当相がインド太平洋地域のSC強靱化の必要性と各国の連携について認識を共有。第1回フォーラムは2021年3月に開催された。2回目の今回は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の活用をテーマに議論した。

ジェトロの佐々木伸彦理事長は開会あいさつで、今般の新型コロナ禍がSCの至る所に潜んでいる途絶リスクを浮き彫りにしたと指摘。「グローバルに展開する企業はコンプライアンス面やエネルギー面などに責任範囲が広がっており、トラブルの火種は拡散している」とし、SC可視化によるリスク管理の重要性を説いた。経済産業省の広瀬直経済産業審議官は、パンデミック以外にも気候変動や人権問題などのリスクファクターによって企業の直面するSCリスクが多様化・複雑化していることを強調。SC強靭化のためには、(1)需要の変動に合わせて供給を調整する追随性、(2)急激に需給バランスが崩れた際のバッファー(緩衝装置)を持つ冗長性、(3)SCが途絶した場合でもしなやかに復元する再起性の3つの要素について、DX利用による実現の重要性を訴えた。

政府セッションでは、各国における政府主導のSC強靭化にかかる取り組みが紹介された。日本からは、経済産業省のアジアDX(ADX)事業での貿易情報の連携や物流コンテナ船の位置情報把握事例などが紹介された。オーストラリア、ASEANからは取り組みが現在進められているSCダッシュボードやマスタープランの進捗が報告された。インドは新型コロナ禍の中でSC強靭化に向けて政府が進めるデジタル化やインフラ開発振興について報告した。

企業セッションでは、各国企業が顧客に合わせて展開するデジタルを活用したサービスやSCマネジメント(SCM)のグッドプラクティスが紹介された。どの企業も人工知能(AI)やマシーンラーニングなどのデジタル技術を活用し、スマートフォンでSCの状況を簡単に確認できる取り組みなどを挙げ、デジタルを活用したSCの可視化・解析・最適化によるSC競争力の向上やパートナー企業を巻き込んだコラボレーションを語った。また、地球温暖化など環境への配慮、データ漏出などの安全性、人権保護といった広い意味でのSCMに対応する上でのデジタルソリューションの有効性も強調された。

各国のアカデミアによるセッションでは、「サステナブル&インクルーシブグロースに向けた取り組み」と「SC強靭化とDX」の2つテーマが議論された。前者では豪印ASEANのサステナビリティーに向けた取り組みの紹介や、SC強靭化と同様にサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現にもデジタル技術の有用性が高いこと、地域大での協力の価値などが議論された。後者では、日本の製造業などでもデータ連携型のグローバルSCMへのアップデートが必要であり、そのためのSCデータの標準化などの必要性や、インドにおけるデータバンクプロジェクトなどが報告された。

(古屋礼子)

(日本、インド、オーストラリア、ASEAN)

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