8月のインフレ率は前月比0.87%、政策金利も1.00ポイント引き上げ

(ブラジル)

米州課

2021年09月30日

ブラジル地理統計院(IBGE)は9月9日、代表的な物価指数である拡大消費者物価指数(IPCA)の8月の上昇率が前月比0.87%だったと発表した。8月単月のインフレ率としては2000年以来最も高かった。前年同月比では9.68%となり、ブラジル中央銀行が設定する年間のインフレ目標値(2.25~5.25%)の上限を6カ月連続で上回った(添付資料図参照)。

前月比の上昇率を費目別にみると、最も上昇率が高かったのは交通・運輸(1.46%増)で、物価全体への増加寄与度も最も高かった(0.31ポイント)(添付資料表参照)。主な要因は燃料価格(2.96%増)の上昇で、ガソリン価格(2.80%増)、エタノール価格(4.50%増)、ディーゼル価格(1.79%増)の上昇などが影響した。IBGEの調査マネジャーのアンドレ・フィリペ・ゲデス・アルメイダ氏によると、国営石油会社ペトロブラスが7月6日から燃料の卸売価格を引き上げた(注1)ことで、「8月の燃料の小売価格の上昇につながった」という(9月9日付IBGEプレスリリース)。ガソリン価格は1リットル当たり2.69レアル(約55.15円、1レアル=約20.5円)、ディーゼル価格は同2.81レアルとなり、価格調整前と比べてガソリン価格は6.3%、ディーゼル価格は3.7%上昇した。

中古車販売価格(1.98%増)、新車販売価格(1.79%増)など車両の価格上昇(1.16%増)も交通・運輸価格の押し上げ要因となった。

交通・運輸の次に上昇率が高かったのは飲食料品(1.39%増)で、家庭内での食事の価格(1.63%増)や外食価格(0.76%増)の上昇などが影響した。

また、干ばつの影響によりブラジルの電気料金は引き続き上昇の一途をたどっている。電気料金は、固定の基本料金に加えて、追加料金が水力発電所のダム貯水量や火力発電所の稼働率を基に算定される。追加料金は「緑」「黄」「赤1」「赤2」の4段階の色で示され、8月は前月に引き続き「赤2」(注2)が適用された。これにより住居関連の物価指数も0.68%上昇した。

唯一低下したのは保健・個人衛生品(0.04%減)で、マスクなどの個人衛生用品(0.43%減)の価格低下などが押し下げ要因となった。

こうした中、ブラジル中央銀行は9月21、22日に金融政策委員会(Copom)を開催し、政策金利(Selic)を5.25%から6.25%に1.00ポイント引き上げた。5会合連続の利上げとなり、「電気料金引き上げによるさらなる物価上昇圧力」を懸念した(9月22日付中銀プレスリリース)。また、10月26、27日に予定している次回Copomでの追加利上げの可能性も示唆した。

(注1)7月5日に卸売価格の調整を発表し、7月6日から適用された。

(注2)「緑」だと追加料金はないが、「黄」の時は100キロワット時(kWh)当たり1.34レアル、「赤1」は4.16レアル、「赤2」は6.24レアルが追加徴収される。

(高氏朋佳)

(ブラジル)

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