英政府が初の環境債を発行、市場からは大きな反響

(英国)

ロンドン発

2021年09月28日

英国政府は9月21日、グリーンボンド(環境債)を初めて発行外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、投資家から多くの応募を集めた。

英国債務管理庁(DMO)の同日付発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、今回の発行額100億ポンド(約1兆4,900億円、1ポンド=約149円)に対し、投資家からの応募は1,014億ポンドに上り、気候変動対策への市場の注目度の高さを裏付けた。これは、英国債および世界の環境債市場でも過去最大の応募額となっている(「ブルームバーグ」紙9月21日)。

環境債で調達した資金の使途は、ゼロエミッションバスなどの環境に優しい交通機関の整備や、洋上風力発電などの再生可能エネルギー施設の建設、自然環境の保護などの政府主導の気候変動対策に限定される。償還期限は2033年7月31日で、表面利率は0.875%。

環境債発行額では米独仏が世界をリード

現在、世界の環境債発行額は増加傾向にある。低炭素経済に向けた投資促進を目的に設立された非営利団体である気候債券イニシアチブ(CBI)が2021年4月に発表した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2020年の世界での環境債発行額(注)は2,900億ドル超と過去最高額を記録した。また、CBIは、2021年の発行額を4,000億ドル超に上ると予想している。

しかし、他の欧米諸国に比べると、英国の環境債発行額はそれほど多くない。CBIが2021年1月付でとりまとめた2020年の発行額外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを国別にみると、首位は米国で、次にドイツ、フランスと続いており、同3カ国で世界の環境債発行額の約半数のシェアを占める一方で、英国は11位と大きく水をあけられている。他方、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催国である英国は昨今、世界に向けて環境問題へ取り組む姿勢をアピールしており、環境債についても2020年11月に政府が発行計画を明らかにしていた(2020年11月13日記事参照)。

今回の環境債発行に際し、リシ・スーナック財務相は、グリーンファイナンスを環境問題対策に不可欠な分野と位置付け、環境債の発行開始が同分野で英国が世界のリーダーであり続けることを示すものだとした。

政府は、今回の100億ポンドを含め2021年内に環境債で150億ポンド超の調達を目指しており、今後も新規発行が続く予定だ。

(注)発行体は、事業会社や金融機関、地方自治体などがある

(尾崎翔太)

(英国)

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