EU、中国産アルミニウム製品の迂回輸入を認定、AD税をタイに拡張

(EU、中国、タイ)

ブリュッセル発

2021年09月21日

欧州委員会は9月15日、家庭用アルミニウムホイルの輸入に対するアンチダンピング(AD)税の対象を従来の中国だけでなく、タイにも拡張したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。中国のアルミニウムホイル製造者が、EUのAD税の対象である同製品をタイに輸出し、わずかな加工工程をタイで施した後にEUに最終製品を輸出しており、これがAD税賦課を回避するための迂回行為と認定された。迂回行為により中国企業は最大35%のAD税を回避した。タイからの同製品の輸入に対しては、既に輸入済みのものも含めて2020年12月21日にさかのぼってAD税が賦課される。

EUの利益を擁護する通商政策実践

欧州委は2021年2月に発表した通商戦略(2021年2月19日記事参照)で、EUの利益を積極的に擁護する姿勢を打ち出している。8月30日に発表した、2020年のAD措置など貿易救済措置の活用状況に関する年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでも、EU企業を不当な貿易慣行から守るべく監視と執行を強めていくとしており、迂回防止措置の強化もその一環に挙げられている。2020年には5件の迂回防止に関する調査を完了し、うち4件では今回のケースと同様に、AD税を迂回先となった第三国へと拡張する決定をした。2019年からは、産業界の申し立てがなくても、欧州委が監視活動の結果十分な証拠があると判断した場合は、職権によって迂回防止に関する調査を開始することができる体制を敷いており、2019年には4件、2020年は1件の職権による迂回防止の調査を開始、いずれも中国産品が対象だった。

今回のアルミニウムホイルの事案では、匿名による通報を受けた欧州委が調査を開始するに十分な証拠が存在すると判断し、2020年12月に調査開始していた。調査では、ダンピングの存在や損害、因果関係といった通常のAD税の調査内容に加え、EU、中国、タイの三者間での当該産品の貿易パターンに変化があったか、その変化が中国に対する現行の対象品目へのAD調査開始時期と連動したものであったか、その変化はAD税の賦課以外の正当な経済的事由などに基づいたものではないか、といった観点で検討した。その結果、中国からタイへの対象産品の輸出のほぼ全量が迂回行為に該当すると認定し、原則として対中措置と同率のAD税がタイからの対EU輸入にも適用することになった。

(安田啓)

(EU、中国、タイ)

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