アジア開発銀行、ミャンマーの経済成長率予測をマイナス18.4%に下方修正

(ミャンマー)

ヤンゴン発

2021年09月29日

アジア開発銀行(ADB)は9月22日、「2021年版アジア経済見通し改定版(Asian Development Outlook 2021 Update外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)でミャンマーの2020~2021年度(2020年10月~2021年9月)の経済成長率をマイナス18.4%に修正した。

4月時点では、新型コロナウイルスのパンデミック(感染爆発)により大きな打撃を受けている経済を、国軍による権力掌握がもたらした政情不安がさらに悪化させることでマイナス9.8%になると予測していた(2021年4月30日記事参照)。

工業分野、サービス分野で10ポイント超の下方修正

産業別でみると、農業分野は1.9%から0.8%に修正した。農産物価格の低下、肥料や農薬のコスト上昇、資金調達の困難、国境貿易の減少が原因としている。工業分野では、2月の政治的混乱により生産量や雇用が減少し、新型コロナウイルス感染症のためにとられた対策や需要の減少から工場の生産停止や閉鎖が起きた、と指摘。同分野の成長率はマイナス10.8%からマイナス20.9%に大きく下振れする、と予測した。サービス分野に関しても、感染症対策のための移動の制限や政治的混乱が大きく影響し、マイナス15.1%からマイナス26.4%へ修正した。

貿易投資額の減少やインフレおよびチャット安の進行を指摘

2020/2021年度の貿易の動向について、2020年10月から2021年7月までの10カ月間の輸出額は、主に畜産物、鉱物、工業製品の輸出が減少したことで前年同期比15.8%減少した、と報告している。同期間の輸入額も、投資の認可・実行の遅延や製造業の収縮により輸入が減少し、前年同期比で24.8%減少した。

インフレ率については、燃料やその他必需品の価格上昇が続いており、通年で6.2%上昇の予測を据え置いた。ミャンマーの通貨チャットは、中央銀行の為替介入にもかかわらず2020年7月からの1年間で19.4%下落し、資本流入の減少と需要の低迷が引き続きチャットの下げ圧力になるとしている。外国直接投資は、2020年10月からの6カ月間で前年同期比54%減少した。

財政赤字は、GDP比5.2%から6.0%に拡大すると予測した。公共サービスの大幅な減少が支出の削減につながるものの、収入の減少が以前の予測よりも早まるとした。

なお、これらの予測に対するリスクは、政治的不確実性と新型コロナウイルスのパンデミックが、引き続き経済に大きな影響を与えることから、下振れする可能性があるとしている。

(田原隆秀)

(ミャンマー)

ビジネス短信 67d87f09d8e2e0fa