ジェトロ、米フィンテック関連スタートアップと日本の金融機関つなぐオンラインピッチイベント開催

(米国、日本)

ニューヨーク発

2021年09月27日

ジェトロは9月16日、「米国フィンテック・スタートアップ・ピッチイベント」を開催した(後援:金融庁、Fintech協会)。日本国内の金融機関と米国のフィンテック関連企業の交流促進を目的として開催され、米国のフィンテック業界の動向と有望スタートアップが紹介された。海外フィンテック関連企業との交流イベントは、ジェトロ・ロンドン事務所が2021年6月に初めて開催し(2021年7月9日記事参照)、今回の米国での開催が続いた。11月にはカナダ、ドイツでの開催も予定している。

今回のイベントでは、初めにテルアビブ(イスラエル)とニューヨークに拠点を持ち、新規事業提携を支援するSOSA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでコーポレートイノベーションを担当するマタン・ベン・ジジ氏が米国のフィンテック・エコシステムを紹介した。同氏は、北米地域には8,775社(2021年2月時点)のフィンテック関連企業が存在することや、2020年の米国フィンテック企業の資金調達額が「新型コロナ禍」にもかかわらずに1,050億ドルに達した点を挙げ、世界最大規模のエコシステムを有するフィンテック先進国としての米国市場をアピールした。同氏はまた、スタートアップ・エコシステムの調査機関であるスタートアップ・ブリンクによる都市別フィンテック・エコシステムの世界ランキングを紹介し、その上位20都市に米国は6都市が入っており、フィンテック・エコシステムを持つ都市が国内に複数存在する点も強調した(注)。

同氏は最近の業界のトレンドについて、有望なスタートアップ企業への投資を行うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)によるフィンテックへの投資が加速しており、新たなアイデアに資金を投入する重要性や、ほぼ全ての金融機関にとって「デジタル・ファースト」が優先事項となっている点を挙げた。最後に、スタートアップ企業との協業の模索や他社の買収などを通じて新たな製品やサービスを積極的に取り入れることが、業界での競争優位性を獲得するために必要と締めくくった。

続いて、日本への進出や日本の金融機関とのオープンイノベーションを目指す米国発のフィンテック関連スタートアップ企業4社がピッチを実施し、自社製品やサービスの特徴と強みを紹介した。生体認証(手書き入力や顔認証)を用いた各種システムへのユーザー認証サービスを提供する「アシグニオ(Asignio外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」、金融機関向けに顧客エンゲージメントプラットフォームを提供する「キャピタルワイズ(KapitalWise外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」、人工知能(AI)技術を活用したインシュアテックサービスを提供する「オムニサイエンス(Omniscience外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」、金融機関向けにリスク管理ソリューションを提供する「ストラテリクス(Straterix外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によるプレゼンの後、参加者が各スタートアップ企業のブースへと自由に移動できるブレークアウトセッションが設けられた。各社のサービスに関する質問が多く寄せられ、日本企業の関心の高さがうかがえた。

最後に、金融庁の松澤翔太氏が登壇し、今回のイベントが日米間の企業が交流を深める第一歩として良い機会であり、今後より多くの海外のフィンテック企業が日本市場に参入することを歓迎したいと述べた。また、Fintech協会の米岡和希理事は同協会の概要や取り組みを紹介した。米岡理事は、日本国内の金融機関のイノベーションが近年進んでいることから、海外企業が日本市場に参入する絶好のタイミングだと指摘し、日本の金融機関との協業や連携を検討する海外のフィンテック企業の発展や、今後の日本への展開に期待を寄せた。

(注)6都市の総合順位は、サンフランシスコが首位で、ニューヨーク(3位)、ボストン(7位)、ロサンゼルス(8位)、アトランタ(15位)、サンディエゴ(16位)と続いている。

(樫葉さくら)

(米国、日本)

ビジネス短信 334577f8b9e70328