ベネズエラ、2回目の与野党対話をメキシコで実施

(ベネズエラ)

ボゴタ発

2021年09月14日

ベネズエラのニコラス・マドゥロ政権の関係者と、反政府関係者それぞれの代表による対話が9月3日から6日にかけて、ノルウェーの仲介、オランダおよびロシアの立ち会いにより、メキシコのメキシコ市で行われた。今回の対話は2回目で、1回目は8月13~15日に行われた。それ以前は、2019年7月にバルバドスで行われている。

対話の出席者は、政府側が2020年12月の国会議員選挙(2020年12月14日記事参照)で設立された国会の議長で元副大統領のホルヘ・ロドリゲス氏ほか国会議員など、反政府側はヘラルド・ブライデ元バルータ市長ほか野党各党の元国会議員、Causa-R、ヌエボ・ティエンポ、大衆意思党、COPEI、ADなどの野党政党の関係者だ。政府側の狙いは、2021年1月に成立した国会を反政府側が承認すること、制裁解除や海外資産の回復。これに対し、反政府側は公正な選挙、迅速なワクチン接種や人道危機への対応、政治犯268人の解放、一時的な司法組織の設置などを要求したとみられる。

なお、第1回の対話では、両者間で覚書(MOU)が締結された。8月13日に交わされたMOUでは、危機解決のため、以下の7項目を議題とすることが明示され、8月17日付特別官報6,637号に掲載された。マドゥロ大統領は、MOUについて「反政府派による政府の認知、政府派による反政府派の認知が確立した」と評し、一定の対話姿勢を示しているともみられる。

  • 政治的権利
  • 公正な選挙の保証
  • 経済制裁の停止や資産の回復
  • 憲法による権利の尊重
  • 政治・社会的共生、暴力の停止、暴力被害者への補償
  • 経済および国民の社会的地位の保護
  • 合意内容の実行・継続・確認

第2回対話の共同声明では、衛生、食料分野における両者の協力、また領土紛争を持つ隣国ガイアナとの交渉再開について合意した。合意内容によると、第3回は9月24~27日に予定されており、司法制度、IMFの特別引出権(SDR)などによるベネズエラ経済の保護などを議題とする旨が記されている。なお、司法制度や選挙といったテーマでの合意はまだなく、今後、特に政権側から何らかの譲歩が示されるかが注目されるものの、一般国民の間ではさほど大きな関心事にはなっていない。

なお、反政府派は2021年11月21日に予定されている地方選挙に対し、当初は、政府主導の選挙だとしてボイコットする方針だったが、8月末に、主要野党連合の「統一プラットフォーム」が一転して参加を決定している。このため、対話よりもむしろ選挙で戦うことに注力すべきだ、との意見も根強い。

マドゥロ政権にとって、経済制裁により主要産業で自由な取引が行えず外貨取得手段が極めて限られる中、パンデミック対策や困窮化した国民への各種補助金の原資確保のため、制裁の解除は不可欠。一方、フアン・グアイド元国会議長をまとめ役とする反政府派は有効な活動を展開できていないが、制裁を行う欧米諸国は今でも同氏を正式な大統領と認知しており、制裁解除のほか、国外で凍結された政府関連銀行口座や金塊などが資産回復のためのカギを握る面を持つ。反政府派はこれまで、マドゥロ大統領の退陣や公正な選挙の実施を要求してきたが、今回は退陣を要求せず交渉テーブルについていることも注目される。

(マガリ・ヨネクラ、豊田哲也)

(ベネズエラ)

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