ブラジル全国工業連盟、日本含む主要貿易相手国・地域との関係性分析

(ブラジル、中国、米国、メルコスール、EU、日本)

サンパウロ発

2021年09月02日

ブラジルの全国工業連盟(CNI)は8月12日、2021年上半期の貿易額を分析するレポートを公表した。経済省によると、同期の輸出総額は1,361億ドルで、前年同期比36%増加した。これは、現行の方法で統計を取り始めた1997年以降で上半期として最も金額が大きい。CNIはその要因を世界経済の回復を受けた需要増によるものとみている。

CNIは、新型コロナウイルス感染拡大で世界が混沌(こんとん)とした状況になった今こそ、主要貿易相手国・地域との関係を強固にし、諸外国企業からの投資を回復させ、ブラジルの持続可能な経済成長や雇用回復につなげるべきだと説明している。その上で、国・地域別で輸出額の大きい中国、EU、米国、メルコスール、日本を取り上げ、以下のように分析した。これら国・地域への輸出額はブラジルの輸出総額の65%を占める。

  • 中国:最大の輸出相手国。ただし、輸出額の80%以上が大豆、鉄鉱石、原油に集中しているため、輸出品目の多角化を目指す必要がある。また、対中依存度を軽減するべく、輸出相手国を多角化する必要性がある。
  • EU:輸出入ともにバランスが取れた貿易相手。ただ近年、ブラジルの輸出入に占めるEUの存在感は徐々に失われつつある(注1)。CNIは、2019年に政治合意に達したEU・メルコスール自由貿易協定(FTA)の迅速な発効を支持する。
  • 米国:ブラジル工業製品の重要な輸出相手国。同国やメルコスール諸国向けは工業製品輸出が多く、ブラジルの雇用創出、税収増につながっている。ただ、両国政府は利益や配当金などにかかる二重課税防止条約を1947年から交渉しているが、いまだ締結に至っていない。貿易障壁などを軽減する目的で現在AEO制度の相互認証などについて交渉中(注2)。
  • メルコスール:加盟各国の経済を回復基調に戻すことが優先。また現在、政治合意段階の対EUや対欧州自由貿易連合(EFTA)、交渉中の対カナダなどとのFTAを支持する。
  • 日本:日ブラジル政府が積極的にFTAについて議論することに期待する。その他、日本の特許庁(JPO)がブラジル産業財産庁(INPI)との間で2017年4月1日から試行を開始している特許審査ハイウェイ(PPH、注3)を恒久的なものにすべき。

(注1)ブラジル経済省の貿易統計(COMEX STAT)によると、EUとの貿易額は2014年まで中国を上回っていたが、2015年以降は中国が上回っている。

(注2)ブラジルにとって米国は貿易投資の重要なパートナーであることから、非関税障壁を軽減することでグローバルバリューチェーンにおける2国間の競争力を向上させる狙いがあるとみられる。

(注3)各特許庁間の取り決めに基づき、第1庁(先行庁)で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁(後続庁)で簡易な手続きによって早期審査を受けられるようにする枠組み。

(古木勇生)

(ブラジル、中国、米国、メルコスール、EU、日本)

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