成長するエジプト経済の魅力と課題、ジェトロがウェビナー開催

(エジプト、アフリカ)

中東アフリカ課

2021年09月24日

ジェトロは9月16日、アフリカビジネス協議会の活動の一環として、「成長するエジプトビジネスの今」と題したウェビナーを開催した。安定的にプラス成長を続けるエジプト経済の魅力と課題、日本企業がビジネスをどう進めるべきかについて活発な議論が交わされた。

前半では、前ジェトロ・カイロ事務所長の常味高志・市場開拓・展示事業課長がエジプトビジネスの最新動向について講演した。エジプト経済は、エルシーシ大統領の強力なリーダーシップの下で成長を続け、2019/2020年度は「新型コロナ禍」でも実質GDP成長率3.6%(IMF)を達成した。近年は政情・治安問題も落ち着いており、2020年もアフリカトップの対内直接投資を維持したことにも触れた。

またビジネストレンドとして、歴史的に強い繊維産業や農産物輸出に加えて、近年はクリーン公共投資の拡大や天然ガス開発、新首都移転などの国家プロジェクトが旺盛に展開されていると紹介。民間のスタートアップの活躍も目立つと語った。他方の課題としては、有効な産業政策の不足(自動車の輸入が増加する中、国内自動車産業への保護が少ないなど)や通関上の問題などがあると述べた。

後半は、カイロ事務所の福山豊和・現所長と井澤壌士所員も加わり、現地の視点を踏まえたパネルディスカッションが行われた。エジプトの好調の要因として、大統領の手腕に加えて、都市開発などの進展で建設業が活況で、中国や湾岸諸国などからの投資が盛んな点などが挙げられた。

注目分野として、製造業では食品や繊維、家電を紹介。日本の家電メーカーは現地エルアラビーへの委託生産を実施している。消費市場としては、人口1億を超える巨大な国内市場があり、スタートアップも含めて中間・貧困層がターゲットになることが多いとしたが、湾岸諸国などからの富裕層の観光客も一部で見られるとした。最近は、Eコマースも盛んになっている。一般消費財は中国・欧州の商品と競合するが、医療分野では日本製品は差別化できるとの指摘もあった。

エジプトでのビジネス上での課題については、近年、投資制度などのルール変更が多い点や、政府が財政健全化のために税金徴収を厳格化している点などが挙がったが、他方で融通が効く面もあるとし、現地の信頼できる民間パートナーと協働することが重要、との指摘があった。「課題も多いが、それゆえに成長の可能性があり、魅力的なのがエジプト市場」という結びになった。

(神山美輝)

(エジプト、アフリカ)

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