金属鉱物の生産額増加、ニッケルは生産量・価格とも急上昇

(フィリピン)

マニラ発

2021年09月08日

フィリピン鉱山地球科学局(MGB)は9月2日、同国の2021年1~6月の金属鉱物の生産額が前年同期比24.5%増の686億3,000万ペソ(約1,509億8,600万円、1ペソ=約2.2円)だったと発表した(「ビジネス・ワールド」紙9月3日)。

生産額が最も大きい鉱物はニッケルで、生産額全体の53.44%を占める。次に金(生産額全体の34.84%)、銅(同10.87%)と続く。電気自動車(EV)のバッテリー生産で使用されるニッケル、流動性の高い投資資産として考えられる金について、政府は外貨収入源として位置付けている(2021年8月10日記事参照)。

生産額が大きく増加した主な要因として、MGBは鉱物価格が上昇したことを挙げている。卑金属について銅は65%、ニッケルは40%、貴金属について金は10%、銀は59%の価格上昇があった。MGBは価格上昇の理由の1つとして、新型コロナウイルス感染拡大によって、世界各地の鉱山で採掘作業に支障が生じていることを指摘している。鉱物資源の需要が世界的に高まっている中で、採掘作業の生産性が低下することで供給能力が低下し、価格の大幅な上昇につながっていると分析する。ニッケル鉱は価格上昇に加え、2021年1~6月の同国生産量が前年同期比で39%増加した。

なお、ドゥテルテ大統領は2021年4月14日、政府が新規の鉱業協定を締結することを可能とした大統領令第130号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に署名した。同大統領令は、アキノ前政権下で出された大統領令第79号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが定める政府と事業者との新規鉱業協定締結の停止について、解除することを規定している(注)。

(注)フィリピンでは、全ての鉱物資源は国家が所有するとしており、国家は資源開発について事業者と協定を結ぶことができる。大統領令第79号では、採鉱事業によって得る収益について、政府と事業者の間で合理的な収益分配方法・スキームを策定する法律が成立するまでは、政府は新規の鉱業協定締結を行わないと規定していた。大統領令130号では、国内での採鉱活性化による経済的便益を重視し、政府の新規協定締結を可能とした(政府通信社2021年4月15日)。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

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