連立与党が崩壊、6閣僚が辞職

(ルーマニア)

ブカレスト発

2021年09月10日

ルーマニア連立与党の「ルーマニア救出+自由統一連帯党(USR PLUS)」は9月6日、国民自由党(PNL)、ハンガリー人民主同盟(UDMR)との3党連立政権を離脱すると発表した。USR PLUS所属のダン・バルナ副首相やクラウディウ・ユリウス・ガブリル・ナスイ経済・起業・観光相をはじめ6閣僚全員が7日、辞表をクラウス・ヨハニス大統領に提出した。大統領は8日に辞職を承認し、暫定的な後任閣僚任命のための大統領令に署名した。これにより、2020年12月に発足した3党連立与党は崩壊した(2020年12月25日記事参照)。

USR PLUSはこれまで、3党連立を維持するためにはバシレ・フロリン・クツ首相(PNL所属)が退陣し、別のPNL所属候補者を擁立すべきだと主張していた。PNLとUDMRはこれを受け入れず、クツ首相を引き続き支援するとしたため、連立内の交渉が決裂、USR PLUSと野党「ルーマニア人の統一のための同盟(AUR)」が9月3日に内閣不信任案を国会に提出した。

アンカ・ドラグ上院議長(USR PLUS所属)とルドビク・オルバン下院議長(PNL所属)は、内閣不信任案の審議日程を審議するため議会を招集したが、7日の4回目の招集でも参加議員数が定足数に満たず、9日に初めて審議される見通しになっている。

この混乱は、3日の閣僚会議にUSR PLUS所属閣僚が欠席したまま、国家投資計画「アンゲルサリニー(Anghel Saligny)」を採択したことが大きな理由だ。この計画は、500億レイ(約1兆3,000億円、レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約26円)に上る国家予算を、地方自治体の上下水・雨水集水施設や道路、天然ガス配給網などのインフラ整備予算として、地方自治体に配分するというもの。予算配分の基準が明確でないため、クツ首相と大きな利害関係を持つPNL所属の市長の地元に多額の予算配分を約束した疑いが持たれている。

クツ首相は9月25日に実施予定のPNL党総裁選に立候補する意向を見せている(現在のPNL党首・総裁はオルバン下院議長)。ステリアン・クリスティアン・イオン前法相(USR PLUS所属)は、この計画に反対していたことから、1日にクツ首相に解任された。

USR PLUS所属閣僚辞職後の、暫定的な後任閣僚任命の状況は以下のとおり。

  • 副首相:2人の副首相のうちダン・バルナ氏(USR PLUS共同党首)が辞職し、後任は任命されておらず空席
  • 経済・起業・観光相:ビルジル・ダニエル・ポペスク・エネルギー相(PNL所属)が兼任
  • 運輸・インフラ相:ダン・ビルチェアヌ財務相(PNL所属)が兼任
  • 保健相:ツェケ・アッティラ・ゾルタン公共事業・開発・行政担当相(UDMR所属)が兼任
  • 投資・欧州プロジェクト相:バシレ・フロリン・クツ首相(PNL所属)が兼任
  • 研究・イノベーション・デジタル化相:タンツォシ・バルナ環境・水・森林相(UDMR所属)が兼任

(ミンドル・ユニアナ、西澤成世)

(ルーマニア)

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