ベネズエラ中銀が6桁のデノミを発表、呼称はボリバル・デジタルに
(ベネズエラ)
ボゴタ発
2021年08月11日
ベネズエラ中央銀行は8月5日付の回章で、10月1日から現在の通貨ボリバル・ソベラノから6桁を切り下げた「ボリバル・デジタル(Bolívar Digital)」を流通させることを発表した。「デジタル経済の開発と、欧米諸国による経済制裁により痛手を受けた経済の回復への一歩とする」としている。
ベネズエラでは、ウゴ・チャベス政権下の2008年と、現ニコラス・マドゥロ政権下の2018年にもデノミを行っている。今回を合わせると、13年間で14桁を切り下げることになる。
現在の通貨「ボリバル・ソベラノ」は、前回のデノミ以降も下落を続けている。この1年をみても、2020年7月末の1ドル=約26万ボリバルから2021年7月末には1ドル=約400万ボリバルと、通貨価値は約15分の1に下がっている。消費者物価指数は、2021年6月末時点で年間(前年同月比)2,615.5%も上昇している。
新通貨は「ボリバル・デジタル」と呼ばれるが、実際には5、10、20、50、100ボリバル紙幣と1ボリバル硬貨が発行される予定。新たなデザインも公表されている。いわゆる中央銀行デジタル通貨(CBDC)としての機能を果たすものかどうかは現状不明で、民間の銀行システムをはじめ、デジタル通貨体制への具体的な対応方法については今後の発表が待たれる。
国内では現在、米国ドルの流通が進み事実上の主要取引通貨になっている。経済関連のシンクタンクであるエコアナリティカ(Ecoanalitica)によると、国内商業取引の67%が米国ドルで行われている(注)。紙幣の発行が十分でないこともドルの流通増加を助長しており、ボリバルによる取引のうち、現金が用いられるのは全体の5%で、残りは全て電子決済だと推定している。ATMでの現金引き出し額も1日100万ボリバルまでなど上限が設けられていることが多い。ただ、経済制裁が続く中、マクロ経済を安定させベネズエラ通貨の信用力を回復させるための方策がとられているわけではなく、利便性以外の中長期的な効果については疑問視する見方が多い。
(注)あらゆる支払いはボリバルでも可能で、電子決済のできる公共料金の支払いや、釣り銭が確実にボリバルとなるバス料金の支払いについては、ほぼボリバルが用いられている。
(マガリ・ヨネクラ、豊田哲也)
(ベネズエラ)
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