ラブロフ外相、アフガニスタン和平交渉に「拡大版トロイカ」活用を呼び掛け

(ロシア、アフガニスタン)

モスクワ発

2021年08月26日

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は8月19日、アフガニスタンの安定回復に向け、これまで和平交渉の場として「拡大版トロイカ」(注1)やモスクワ形式(注2)の枠組みの中でアフガニスタン国内の当事者同士の対話を開始すべきとの姿勢を示し、対話に向けたあらゆる支援の準備があると表明した。

8月15日のイスラム主義組織タリバンによる首都カブール進攻後、ロシアはタリバンと在カブールのロシア大使館員や現地のロシア国民の安全確保に合意するなど、緊密な関係を確保している(2021年8月15日記事参照)。ロシア外務省の発表(8月19日)によれば、アフガニスタンに残るロシア国民からは帰国便手配の要望が寄せられており、タリバンから安全な退避保証が得られたことを受け、近日中に特別便の手配を行う予定だ。

他方で、ロシアとしてはアフガニスタン情勢の混迷化に巻き込まれることは避けたいとの思惑がある。ドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は、パンジシール州における反タリバン勢力の結集が内戦の激化につながる可能性があることを念頭に、ロシアの軍事介入には否定的な見方を示した(タス通信8月23日)。

また、アフガニスタンと隣接する中央アジア諸国の不安定化を避けるべく、ロシアは関係諸国と緊密に調整を行っている。ユーリー・ボリソフ副首相は、国境警備を目的に集団安全保障条約機構(CSTO)(注3)加盟国へ武器を供与する意向を示した(タス通信8月23日)。一方、プーチン大統領はCSTOのオンライン形式による臨時首脳会議に出席し、イスラム過激派組織がCSTO加盟国域内に活動範囲を広げることへの懸念を表明した。

(注1)ロシア、米国、中国の3カ国にパキスタンを加えた拡大版トロイカが、アフガニスタン政府とタリバンとの和平交渉を仲介する会合。直近では、5月の米軍の撤退の開始に先立ち4月にカタールで開催された。

(注2)ロシア、アフガニスタン、中国、パキスタン、イラン、インドなどが参加するアフガニスタン和平協議会合。

(注3)ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンが加盟する安全保障機関。

(菱川奈津子)

(ロシア、アフガニスタン)

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