産業界の業況判断が悪化、過去14カ月で最低水準に

(タイ)

バンコク発

2021年08月10日

タイ工業連盟(FTI)は8月9日、7月のタイ業況判断指数(TISI、注)を発表した。それによると、7月の業況判断指数(回答企業数:1,386社)は前月比1.8ポイント減の78.9ポイントと、4カ月連続で低下した。TISIが80ポイントを下回るのは2020年5月以来で14カ月ぶり(添付資料図参照)。

タイでは4月から新型コロナウイルス感染が増加している。特に7月は新規感染者数が1万人を突破し、連日のように過去最高値を更新するなど、感染拡大に歯止めがかからなかった。これに伴う活動制限措置の導入や、クラスター発生による営業・操業の停止、サプライチェーンの寸断による工場の停止など、経営環境が大幅に悪化した。

FTIは業況判断のマイナス要因として、感染症のまん延と、13都県の封鎖措置、移動制限や夜間外出禁止令などを挙げている。加えて「労働者のワクチン接種率が極めて低い」と指摘し、感染症が生産能力低下や労働力不足といった問題を引き起こしているとする。一方、プラス要因としては、輸出先では感染状況が落ち着いている国・地域もあり、バーツ安も進んでいるため、輸出が拡大基調にあるとしている。

今後3カ月先の業況感を聞いたTISI見通しは、前月比1.5ポイント減の89.3ポイントに下落した。同指標が90ポイントを割り込むのは2020年4月以降15カ月ぶりで、見通しは明るくない。FTIは工場など生産現場で広がる感染状況を懸念しており、製造業、特に好調な輸出メーカーへの影響に注視している。

(注)TISI(Thai Industries Sentiment Index)は、FTIが加盟企業(製造業を中心とする45産業)に毎月行っている景況感に関するアンケート調査に基づく指数。当該月の現況と、3カ月先の見通しをそれぞれ聞いており、100を超えると「業況が良い」、100を下回ると「業況が悪い」を示す。

(北見創)

(タイ)

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