陸上風力発電量が拡大するも、温室効果ガス削減目標達成には一層の加速が必要

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2021年08月03日

ドイツ風力エネルギー協会(BWE)は7月27日、2021年上半期のドイツ国内の陸上風力発電について、新たに240基の陸上風力発電機が設置され、発電容量ベースで971メガワット(MW)が導入されたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。新規導入容量は前年同期比62%増となり、2019年通年の新規導入容量も超えた。2021年通年の見通しは、年初に2,000~2,500MWと予想したものを2,200~2,400MWに修正した。

BWEのヘルマン・アルバース会長は「陸上風力発電は一時期伸び悩んだ後、現在は増加に転じている。他方で、欧州および国内の野心的な目標達成のため、陸上風力発電機の設置場所や許認可に関する状況の改善が不可欠だ」と述べた。

BWEは、陸上風力発電拡大の障壁として、設置場所の不足や複雑な許認可手続き、野生生物の保護に関する対立問題などを挙げている。このほか、風力発電機の製造場所から設置場所への輸送許認可の簡素化や大きく重い風力発電機輸送に耐えられる道路や橋といったインフラの整備の必要性を指摘し、連邦レベルの統一された手続きも必須だとした。

ドイツ機械工業連盟(VDMA)パワーシステムズ(注)のマティアス・ツェリンガー会長は「今の状態は再生可能エネルギー法(EEG、2020年12月28日記事参照)で規定する陸上風力発電の年間導入目標4,000MW弱を達成するのには十分ではない」と指摘した。また、「改正気候保護法が規定する、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比で65%削減する目標の達成には(2021年7月6日記事参照)、陸上風力発電は年間最低5,000MWの新規導入が必要」と加えた。

なお、連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)の6月28日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2021年上半期の国内総電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合は約43%(暫定値)だった(添付資料表参照)。前年同期比8ポイント減の理由として、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で総電力消費量が減少したため相対的に再生可能エネルギー比率が高まっていたことを挙げた。内訳をみると、陸上風力が17%、続いて太陽光が10%、バイオマスが8%、洋上風力が4%、水力が3%、廃棄物発電が1%となった。

(注)ドイツにおける製造業を代表する業界団体である同連盟の専門工業会の1つ。ドイツ国内外の風力、水力、火力発電プラント、燃料電池、蓄電システムのメーカーの利益を代表する。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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