米ウォルマート、自社のEC技術を小売企業に販売

(米国)

ニューヨーク発

2021年08月04日

米国小売り大手ウォルマートは7月28日、同社が開発した社内向けの電子商取引(EC)技術を小売企業に販売すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国ソフトウエア大手のアドビとの提携を通じ、オンラインおよび店舗でのフルフィルメント(注1)や受け取りに関する技術をアドビのプラットフォームを通じて小売業者も利用できるようにする。同社の中核事業である小売り販売以外に、EC関連技術の提供にも事業領域を拡大し、新たな収益源を開拓する。同社の小売り関連技術が他社に提供されるのは今回が初めてだという。

発表によれば、小売企業はアドビのプラットフォームを通じてウォルマート独自のクラウド基盤のサービスを利用することで、消費者がオンラインで注文してから商品を店舗で受け取るまでに生じる作業を効率化し、シームレスな顧客体験を提供できるようになる。具体的には、各社の従業員はウォルマートのモバイルツールを使って受注の管理や受け取りの記録などができる。さらに、同社の通販サイト「ウォルマート・マーケットプレイス」での商品販売を通じて、新規顧客を獲得するとともに、同サイトが提供する梱包(こんぽう)や配送サービスを利用し、全米に2日以内で配送できるようになる。

全米で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、同社はネット注文された商品の宅配サービスを強化した。また、店内での滞在時間を短くしたい消費者向けにカーブサイド・ピックアップ(注2)を展開し、オムニチャネル化を進めた。これらの動きにより、同社の2021年度(2020年2月~2021年1月)のオンライン売上高は前年度比79%増加し、宅配や受け取りサービスの売上高は前年度比3桁増となった。

アドビによれば、2018年にオンラインで購入した商品を店舗で受け取るサービスを提供していた小売業者では、注文全体のわずか7%しかこの方法が用いられていなかった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、その割合は2021年6月時点で22%に拡大した。また、アドビと市場調査会社IDCによれば、2020年12月時点でオンラインでの購入や受け取り、配送のためのサービスあるいはソフトウエアの潜在的な市場規模を約440億ドルと推計する。今後もさまざまな領域でのデジタルシフトが急速に進み、オンラインとオフラインの融合を図る販売戦略のオムニチャネル化がますます重要になるとみられる(「CNBC」7月28日)。

今回の発表を受け、ウォルマートの最高技術責任者兼最高開発責任者のスレッシュ・クマール氏は「人々がより良い生活を送れるようにするという基本的な使命は、われわれのアイデアの中心にある」とし、「顧客体験を強化するアドビの強みと、われわれが持つオムニチャネルについての比類なき専門知識を組み合わせることで、他社のデジタルトランスフォーメーションの加速を後押しできる」と述べた。

(注1)通信販売やネット通販における、受注、梱包、発送、受け渡し、代金回収までの一連のプロセス。

(注2)オンラインで注文した商品を店舗の駐車場で降車することなく受け取ることができるサービス。

(樫葉さくら)

(米国)

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