ブラジル経済省傘下の研究所、メルコスール・韓国FTAの経済効果を公表

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、韓国)

米州課

2021年08月16日

ブラジル経済省傘下の応用経済研究所(IPEA)は8月6日、メルコスールと韓国との自由貿易協定(FTA)が発効した場合のブラジルに与える経済効果の試算外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます結果の初版を発表した(注1)。それによると、ブラジルのGDPは0.49%押し上げられる(注2)。GDPの内訳をみると、投資(固定資本形成)が1.16%、財・サービスの輸出が1.78%、同輸入が1.51%(GDPへの寄与はマイナス)、それぞれ押し上げられる(増加する)。

メルコスールと韓国は2018年にFTA交渉を開始し、現在も交渉中。6月に第6回交渉を行った(2021年6月8日記事参照)。

財・サービス輸出の押し上げ効果(1.78%)を業種別にみると、サービス(3.16%)と農業(2.05%)で押し上げ効果が大きい(添付資料表1参照)。財の輸出では、押し上げ効果が大きい順に「その他の穀物」(10.4%)、「電子機器」(6.0%)、「皮革および履物製品」(5.5%)、「衣類」(5.3%)、「機械および機器(電気を除く)」(3.7%)と続く(添付資料表2参照)。「その他の穀物」が大きく増加する要因として、IPEAは「韓国は、ブラジルが穀物輸出で競合する米国と2012年にFTAを発効しているが、メルコスールとのFTAによりブラジル産穀物の競争力が増すため」と分析している。

ブラジルにおける生産も全体で0.34%増加する。業種別にみると、「農業」(0.69%)、「鉱業」(0.20%)、「製造業」(0.18%)、「サービス業」(0.40%)となり、農業とサービス業での押し上げ効果が大きい(添付資料表1参照)。一方、雇用については、「製造業」(0.21%減)が押し下げ要因となり、全体で0.02%減少する。

業種をさらにブレークダウンした産業分野別でみると、「電子機器」「自動車および同部品」「繊維製品」の3分野は、生産および雇用が共に減少する(添付資料表2参照)。特に電子機器分野については、生産が2.6%減、雇用が2.9%減少し、押し下げ幅が全46項目の中で最も大きい。自動車および同部品も、生産が0.4%減、雇用が0.6%減少する。IPEAはその理由に言及していないが、自動車は現在、完成車では原則35%、自動車部品も18%程度の関税がブラジルで賦課されているため、関税撤廃で国内生産が減少すると見込んだとみられる。

ブラジル経済省によると、韓国はブラジルにとって輸出相手国第11位(注3)。日本は第6位。輸入相手国では韓国は第5位で、第6位の日本を上回っている。

(注1)IPEAが公開したレポートでは、メルコスール・韓国FTAにより、2021年から関税削減を開始し、2040年に関税を撤廃すると想定。GTAPモデルを用いて、2020年のデータを基に2044年までの試算を行っている。レポートの原文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)はポルトガル語で公開されている。

(注2)2021年にFTAが発効し、2044年に経済が均衡状態に戻るという、FTAの効果が全て反映されると想定。FTAがない場合に比べてどの程度GDPを押し上げるかをGTAPモデルで試算したもの。

(注3)2020年時点。

(辻本希世)

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、韓国)

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