ASEAN税関トランジットシステム(ACTS)、国境防疫措置に対応

(タイ、ASEAN)

バンコク発

2021年08月04日

タイ税関は7月27日、ASEAN税関トランジットシステム(ACTS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づくASEAN域内の陸上輸送を促進するため、税関通達第117/2564号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発出した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う防疫措置により、ACTSの利用は実質的に困難だったが、今回の通達により利用が可能となる。

ACTSは、ASEANの複数国をまたぐクロスボーダー陸上輸送の際に、トランジット貨物(通過貨物)にかかる各国境での通関手続きを円滑化する制度だ。EUの支援により、陸でつながるタイ、マレーシア、シンガポール、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの7カ国で導入が進んでいる。タイでは2020年10月27日から制度が開始された(税関通達第169/2563号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

当初、ACTSでは複数国にまたがる陸上輸送に当たって、税関申告を一度すれば当該データが各国の国境税関に共有され、通過国や仕向け国の国境での税関申告が不要となり、同一トラックを用いて積み替えせずに輸送できる計画だった。しかし、昨今の感染防疫措置により、トラックが国境を越えて乗り入れることが困難になっている。その結果、貨物の積み替えをしないことが前提のACTSは制度上開始されたものの、タイの利用実績はなかった。

今回の通達により、輸送業者がACTSによる「ダミー許可番号」(管轄税関当局が発行)を受け取ることで、貨物の積み替えは要するものの、指定通過ルートの指定国境でACTS利用が可能となった。タイ税関によると、現状で利用可能なルートは(1)シンガポール=マレーシア=タイ、(2)マレーシア=タイ=カンボジア、(3)シンガポール=マレーシア=タイ=カンボジアの3パターン。

しかし、輸送業者によると、国境でのトラック乗り換えと貨物の積み替えが必要となるため、従前の「トランジットのための電子通関手続きに係る税関通達(第139/2560号)」(2018年2月9日記事参照)に基づいたトランジット輸送と大差がないという。そのため、引き続き従前の方法で輸送を継続する事業者が多い見込みだ。

ACTSにかかる詳細情報や問い合わせは、担当の税関手続き1課のスカル・シリチャンディロック係長(電話番号:+66-2-667-7000、内線:5359)まで。

(シリンポーン・パックピンペット、北見創)

(タイ、ASEAN)

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