浦項地震真相調査委員会、調査結果を発表

(韓国)

ソウル発

2021年08月06日

韓国の首相所属の「浦項地震真相調査委員会」は7月29日、政府の地熱発電技術開発事業(注1)に起因して誘発された2017年11月の浦項地域での地震(マグニチュード5.4)に関する調査結果を公表した。

同委員会は、地熱発電技術開発事業の関係者がそれぞれに与えられた役割と責任を怠ったことに加え、安全を確保するための法的・制度的不備も相まって、地震発生に至ったと結論づけた。

委員会は具体的には、地熱発電事業者であるNEXGEOコンソーシアム(注2)が、(1)誘発地震を監視するための地震計の管理と分析を十分に行っていなかった点、(2)誘発地震管理の信号システム(Traffic Light System、注3)を自ら有利に変更し、さらに関係機関と共有していなかった点、(3)マグニチュード3.1の誘発地震発生時に地震発生のメカニズムを分析せずに水圧破砕を強行するなど、地震リスクの管理を怠った点に問題があったとした。

また、委託側の産業通商資源部や、エネルギー技術評価院、浦項市は、当該事業によって地震が誘発されることを事前に認知していたものの、地震リスクの管理を十分に行っているとは言い難く、委託者の責務を怠っていたと指摘した。

制度的な課題としては、地熱発電事業に関する地震リスク管理について、法的根拠が不備という制度的な課題も提起した。

これを受けて浦項地震真相調査委員会は、NEXGEO、韓国地質資源研究院、ソウル大学の責任者に対し、業務上過失致死容疑で検察に捜査を要請することとした。

(注1)産業通商資源部による「メガワット級地熱発電の商用化技術開発」事業。水圧破砕などで人工的に地下貯留槽の透水性を改善する事業。2地点のポーリングの後、3回の水圧破砕を実施した結果、マグニチュード3.1の地震を誘発。その後も継続して水圧破砕を実施した結果、2017年11月15日にマグニチュード5.1の地震が発生した。

(注2)NEXGEO、韓国地質資源研究院、ソウル大学、韓国建設技術研究院など。

(注3)水圧破砕により発生した誘発地震の規模の色を緑、黄、赤に区別して、その結果を基に水圧や水量を調整し、政府や市民に報告するシステム。

(当間正明)

(韓国)

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