バイデン米政権、ガソリン価格高騰に警戒感、FTCに取引監視依頼

(米国)

ニューヨーク発

2021年08月13日

ジョー・バイデン米国大統領は8月11日、国家経済会議(NEC)のブライアン・ディーズ議長が連邦取引委員会(FTC)のリナ・カーン委員長宛ての書簡で米国のガソリン市場を監視し、価格上昇につながる違法行為に対処するよう要請したと明らかにした。書簡では「夏のドライブシーズン中、石油価格とガソリン価格に乖離が見られた」と指摘し、違法行為があるのではないかという政権の懐疑的な姿勢を示唆している。FTCは独立機関のため、行政機関の指示を受ける立場にはなく、FTCの広報担当者は書簡を受け取ったことを認めつつも、内容に関するコメントは差し控えた(政治専門誌「ザ・ヒル」8月12日)。

米国自動車協会(AAA)によると、8月12日現在、1ガロン当たりのレギュラーガソリンの平均価格は3.19ドルで、1年前の同2.18ドルの1.5倍に達しようとしている。8月11日に発表された消費者物価指数(2021年8月12日記事参照)をみても、ガソリン価格は前月比で2.4%上昇しており、新型コロナウイルスのデルタ型変異株の感染拡大の影響も相まって、これまでの伸びに鈍化の見られる中古車や航空運賃といった項目と異なる動きを見せている。発表の同日にバイデン政権はOPECプラスに対し、原油の増産を求める声明(2021年8月12日記事参照)を発表していることからも、ガソリン価格の抑え込みに躍起になっていることが分かる。

OPECプラスへの声明でも指摘しているように、ガソリン価格の高騰は家計を圧迫し、消費抑制の要因となることから、新型コロナ感染拡大からの経済回復に悪影響を及ぼしかねない。また、共和党は、40万ドル以下の家庭には増税しないとするバイデン政権に対し、「物価の上昇は事実上、労働者にとって増税と減給の両方をもたらした」と述べるなど、攻勢を強めている。

今回の監視・調査依頼について、石油価格情報サービス(OPIS)でエネルギー分析のグローバル責任者を務めるトム・クローザ氏は「調査によって何かが明らかになるとは思えない」と述べ、人件費の高騰やドライバー不足、製油所の閉鎖などを要因として挙げている(政治専門誌「ザ・ヒル」8月12日)。

(宮野慶太)

(米国)

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