欧州産業連盟、EU経済は回復傾向にあるも内需の回復が必要と指摘

(EU)

ブリュッセル発

2021年08月03日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は7月30日、「夏季経済見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、EUの2021年および2022年の実質GDP成長率をそれぞれプラス4.4%、4.6%とした。同連盟は、EU経済は力強く回復しているものの、新型コロナウイルス危機からの完全回復へは「道のりは長く、下振れリスクが多くある」とした。同連盟は下振れリスクとして、より感染力が強い新たな変異株の出現のほか、インフレ圧力が高まっていること、公的な「新型コロナ危機」関連の企業支援措置の早期打ち切りにより債務返済が不可能になる企業が増えるなどして経済回復が妨げられること、などを挙げた。そして、EU、各国政府に対して、(1)経済状況に応じた企業支援の継続、(2)EU経済の長期的な成長や雇用回復につながる構造改革の実施、(3)中期的に、加盟国が持続可能な財政に戻すこと、(4)「新型コロナ危機」を教訓として、人・モノ・サービスの自由な移動を保証するセーフガードの構築、を提言した。

輸出が大きく回復も、経済の完全回復には内需の回復が鍵

同連盟はEU経済の現況について、米国や中国といった主要貿易相手国の経済回復がEUより早く進み、2020年10月~2021年6月の期間は2019年平均を10%超上回るなど、輸出が大きく回復していることを最大の前向き要素とした。しかし、輸出の回復だけでは「経済の完全回復にはつながらない」と指摘。特に、内需について、2021年第1四半期(1~3月)も「新型コロナ危機」以前の水準よりも10%近く下回っており、その回復がカギとなるが、消費者信頼感が回復しつつあるものの、内需は依然として冷え込んでいるとした。「新型コロナ危機」による雇用情勢の悪化に伴い、収入が減少した世帯が増えたはか、貯蓄率が2019年の12.9%から、2020年は19.5%に上昇したように、経済の先行きに不安感を覚え、消費を抑制した世帯が増えたことも一因とした。

同連盟は、貯蓄を一転、消費へ回す世帯が増え、内需が大きく回復する可能性もあるが、一方で、失業率は7.2%と、「新型コロナ危機」以前の6.5%を大きく上回った状態にあり、収入減から消費支出を増やせない世帯もあるとみる。また、企業投資も増えているものの、経済の不確実性が依然として高く、その回復は緩やかとした。その上で、内需は2021年後半に回復し、それによって、EU経済は2022年には完全回復するとの見通しを示した。

(滝澤祥子)

(EU)

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