中国の対ブラジル投資の約5割は電力分野、両国ビジネス委が報告書発表
(ブラジル、中国)
サンパウロ発
2021年08月18日
ブラジル・中国ビジネス委員会(CEBC)(注1)は8月5日、「中国の対伯投資:歴史的経緯、傾向、グローバルな挑戦(2007-2020)」と題する報告書を発表した。併せてウェビナー(注2)が開催され、近年の中国の対ブラジル投資動向が議題となった。
報告書によると、2007年から2020年までの14年間に中国は176のプロジェクトへ投資し、累積投資額は661億ドル。中国による南米諸国への総投資額のうち、ブラジル向けは47%を占めている。また、中国の対ブラジル投資は電力分野に集中しており、2007年から2020年までの投資額全体の48%が電力と最も多く、続いて石油関連28%、鉱業7%、製造業6%となっている(注3)。同日のウェビナーにおいて、マルコス・カラムル元駐中国大使は、投資が電力分野に集中するポイントとして、以下の3点を挙げた。
- 中国は長距離送電に関する技術を有し、その技術をブラジルに移転できる。
- ブラジルには有能な労働力がある、すなわち会社の経営管理も担当できる優秀な電気技師が多く存在する。
- ブラジルの電力分野の規制は、他の新興国と比較して安定している。
報告書によると、ブラジルに投資する中国国営企業は16社あり、それらは中国の国務院に属している。これら国営企業は、中国によるブラジルへの投資額(ストックベース)の82%を占め、プロジェクト数の39%を占めているという。
報告書によれば、ボルソナーロ政権が発足した2019年の投資額は前年比2.2倍の73億ドルで、政権交代があった中でも中国の投資動向に大きな変化はみられなかった。同年は、北東部への投資額(14億ドル)と件数(14件)が初めてサンパウロ州やリオデジャネイロ州が位置する南東部へのそれを上回り、地域別で首位となった。CEBCのトゥーリオ・カリエッロ調査・コンテンツ部長は「北東部の州知事らによる中国訪問や投資勧誘活動の成果だ」と述べている。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年の投資額は19億ドルで前年比74%の減少となり、2014年以来の最低水準になったという。
(注1)ブラジル・中国間の貿易および投資促進、ビジネス環境改善を目的に2004年に設立された非営利組織。北京とリオデジャネイロ州に事務所が置かれている。
(注2)ウェビナーはこちらからアクセス可(ポルトガル語)。報告書もポルトガル語で公開されている。
(注3)中国企業によるブラジル向け投資は、ルクセンブルク、英領バージン諸島、ケイマン諸島といったタックスヘイブン地域を経由する投資もあり、ブラジル中央銀行などが公表している国別の対内直接投資の統計上表れてこない場合があるので留意が必要。
(エルナニ・オダ、宮本敏央)
(ブラジル、中国)
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