ドイツ企業、新型コロナ感染拡大を受けたサプライチェーンの国内回帰は少数派

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年08月17日

ドイツのifo経済研究所は8月10日、新型コロナウイルス感染拡大の影響などを受けたグローバル・サプライチェーン見直しがドイツ経済に与える影響の調査結果と、ドイツ企業のサプライチェーン見直しに関するアンケートの結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

調査報告書の題名は「グローバル・サプライチェーン-改革の必要性と可能性」。調査は、ドイツ与党のキリスト教民主同盟(CDU)系シンクタンクであるコンラート・アデナウアー財団(KAS)がifo経済研究所に委託したもの。同調査では、まず、ドイツと他国の間のサプライチェーンの状況を分析し、ドイツは他国とのサプライチェーンに深く組み込まれていることを明らかにした。特にEU加盟国とのサプライチェーンが最も重要で、例えば、最終製品に組み込むためにドイツが輸入した中間材料は、他のEU加盟国からのものが4割以上を占めるという。

その上で、同研究所は、新型コロナウイルス感染拡大などのリスクを受けて、調達・生産などのサプライチェーンを国内に回帰、または近隣諸国(他のEU加盟国、北アフリカ諸国、トルコ)に回帰させた場合のドイツマクロ経済への影響を試算した。国内回帰の場合はドイツの実質GDP成長率が9.68%減少、近隣国への回帰の場合は4.17%減少するとし、マクロ経済上、ドイツがサプライチェーンを自国に回帰させるメリットはないと結論付けた。

さらに同研究所は、企業レベルでの判断を調査するため、2021年5月に約5,000社の企業(製造業、サービス業、小売・卸売業)にアンケート調査を行った。アンケートではまず、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今後の調達戦略変更計画の有無を聞いた。製造業では、41%が「ある」、44%が「ない」、15%が「わからない」と回答した。「ある」と回答した製造業企業にその戦略を聞いたところ、「国内での調達を強化」とした企業は12.0%、「他のEU加盟国からの調達を強化」とした企業は11.3%にとどまった。その他の回答は「調達の多様化」(29.5%)、「サプライチェーンの監視強化」(25.9%)、「在庫積み増し」(23.4%)などで、大企業は調達多様化、中小企業は在庫積み増しを計画する傾向にあった。

同研究所は調査結果から、サプライチェーンの国内回帰を促すような政策よりも、原産地規則の簡素化や調和により自由貿易協定の利便性を向上させるなどで、特にドイツ中小企業が海外とのサプライチェーンの多様化・維持をしやすくする仕組みづくりが大事と指摘した。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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