台湾工業総会、2021年版白書を発表、課題と政策提言

(台湾)

中国北アジア課

2021年08月19日

台湾の製造業関連団体を束ねる「中華民国全国工業総会(以下、工総)」は8月12日、「2021年版工業総会白書」を発表した。白書では台湾経済を取り巻く局面に対処するため、台湾当局に9項目の解決策を提言した。工総は「台湾にはサプライチェーンの再編で果たすべき役割がある」と指摘すると同時に、産官連携の下で国際社会と産業協力の懸け橋を構築し、台湾をハブに世界の重要な産業パートナーをつなぐ「パールチェーン」協力モデルの形成を呼びかけた(「経済日報」8月13日」)。

工総の王文淵理事長は、当局が現在「6大核心戦略産業」を推進し、アジアのハイエンド製造センターを目指すとしている点について「積極的に新興産業の促進を図り、従来型産業や中小企業の事業転換・高度化を実現することを期待する」と述べた。

白書では、68の課題と206項目の政策を提言、第2章「変局」の第1項目では、「いかに産業を支援し、(新型)コロナ(ウイルス)禍を乗り越えるか」という課題について、「ワクチン接種を増やすことで、ワクチン接種を困窮支援よりも優先すべき」と指摘した。

第2項目の「産業構造の均衡」では、電子や情報通信産業が輸出を牽引し、半導体のシェアが10年で2倍になったとする一方、産業の過度な集中は産業発展のバランスを崩すと指摘した。その上で、ハイテク産業が伝統産業の発展や転換・高度化をもたらす点を強調した。

台湾のエネルギー政策について、原子力発電の推進を優先項目に含めず、「グリーンエネルギーの発展、天然ガスによる火力発電の増加、石炭使用の削減、非原子力」を方向性とした上で、再生可能エネルギー開発の進捗の遅れを指摘、発電インフラの整備を急ぎ、電力供給システムの安定性を高める必要があるとしている。

王理事長は「台湾の電力供給の脆弱(ぜいじゃく)性を考慮し、いかなるエネルギー源も放棄すべきではない」と述べ、白書では「原子力は再生可能エネルギーではないものの、クリーンエネルギーに分類、二酸化炭素の削減に大きく貢献できる」としている。

外交については、「親美睦中」(米中双方と良好な関係構築)を提起、米国と経済・貿易・産業協力を深め、特に半導体分野では、台米間に常設プラットフォームを構築し、第3世代の半導体における台湾の優位性を確保するとした。一方、中国に対しては、台湾から中国への投資は減少しているものの、2020年の上場企業の対中投資収益が過去最高を記録した点に触れ、「両岸関係では経済・貿易は最優先事項であり、両岸関係が戦争によって脅かされないために、双方のシンクタンク間の交流を奨励し、「政府と民間」の2つの対話ルートを再構築し、台湾海峡の平和と安定のために努力する必要がある」と提言した。

(相馬巳貴子)

(台湾)

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