中国商務部、下半期の貿易は減速見通し、FTA交渉を加速

(中国)

中国北アジア課

2021年08月27日

中国商務部の王文涛部長は8月23日に行われた記者会見で、中国の貿易について「今年下半期の前年と比較した伸びは次第に緩やかになり、来年は厳しい情勢になるだろう」と述べた。海関(税関)総署の貿易統計(ドル建て)によると、2021年7月の輸出は前年同月比19.3%増、輸入は28.1%増と、6月の伸び率と比べそれぞれ12.9ポイント、8.6ポイント鈍化した中、今後の見通しについて厳しい見方を示した。

王部長は、1~7月の貿易総額(人民元建て、注1)は前年同期比24.5%増と過去10年間で最も高い伸びになったが、これにはさまざまな短期的な要因が影響していると説明した。例えば、周辺国・地域での新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、中国側の一時的な受注増につながった面もあるが、こうした受注は長続きしないとした。また、マスクや防護服、人工呼吸器など新型コロナウイルス関連の品目は、2020年に中国の輸出拡大に寄与した一方、足元で輸出は急減しており、これらの一時的要因が徐々に剥落するため、2021年下半期の貿易は減速し、2022年は厳しい情勢になるとみている。

さらに、2020年下半期には中国の貿易が回復したことを受け、2021年下半期は比較対象となる前年同期の数値が相対的に高いことも一因とした。こうした中、常に高い伸びを維持し続けることはできないとして、2021年下半期の貿易の伸びは次第に鈍化するが、「合理的な範囲内に保ちたい」と述べた。中国のマクロ経済政策上も、景気変動の振幅を「合理的な範囲内」に維持する必要があるとした。

とりわけ中小の貿易会社は、輸送コストの高騰、資源・原材料価格などの上昇、人民元レートの高止まり、労働コストの上昇という「4つの困難」に直面しているとして、商務部としては各種の対策を実施し、受注や関連のサプライチェーンの安定を図るほか、越境EC(電子商取引)をはじめとする新たな形態の貿易などを推進するとした。

自由貿易協定の交渉を加速

記者会見に同席した商務部の王受文副部長は、自由貿易協定(FTA)は中国の貿易や投資の拡大・安定につながるとして、今後、FTAの交渉ペースを加速していく意向を示した。具体的には、中国・シンガポールFTA、中韓FTAなどの締結済みFTA(注2)のグレードアップを進めると同時に、日中韓FTA、および湾岸協力会議(GCC)、イスラエル、ノルウェーなどとの交渉を加速させるとした。また、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入も、積極的に検討していると述べた。

(注1)ドル建てでは、前年同期比35.1%増だった。

(注2)中国は、26の国・地域との間で、19のFTAを締結済み。

(森詩織)

(中国)

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