韓国の家計債務残高、過去最高を記録
(韓国)
中国北アジア課
2021年08月26日
韓国銀行(中央銀行)は8月24日、2021年第2四半期末(6月末)現在の家計信用(家計債務)残高が1,806兆ウォン(約172兆円、1ウォン=約0.095円)と、過去最高を更新し、初めて1,800兆ウォンを超えたと発表した(添付資料表参照)。家計信用は、家計が抱える債務を意味し、銀行などからの借り入れとクレジットカード使用額などの販売信用を合わせたものだ。同行では四半期ごとに統計を発表しているが、この値は前期末(3月末)に比べ41兆ウォン増となった。増加幅は第2四半期(4~6月)としては過去最大。2020年第3四半期(7~9月)以降、40兆ウォン前後の大幅な増加が続いている。韓国の家計信用残高は名目GDPの9割程度の規模に相当し、人口1人当たりでは3,500万ウォン弱になる。
家計信用が増加している理由について、韓国銀行では「住宅売買関連などの資金借り入れ需要が継続し、新型コロナウイルス関連の生活資金需要と一部の大企業の株式公募に対する資金需要まで重なったため」と説明している。
家計信用需要には、「新型コロナ禍」による生活費などの借り入れと資産購入のための借り入れがあるが、家計信用増加の主要因は後者だ。韓国では不動産価格の上昇が続いており、今後も上昇が続くとの見方が根強い。そのため、金融機関からの借り入れを増やして不動産を購入しようとするインセンティブが働く。国民銀行の住宅売買価格指数をみると、ソウルの2021年7月のマンション価格指数(2019年1月=100)は127.8と、2年半余りで3割近く上昇した。特に、この1年間の上昇が顕著で、2020年7月に比べると2割近く高くなっている。さらに、株価も、代表的な株価指数の「KOSPI」(韓国総合株価指数)は堅調で、2021年8月下旬の水準は年初に比べ1割程度高い。
家計信用が増加する一方で、家計の銀行借入金の延滞率は2021年5月時点で0.2%と、低い水準にとどまっている。ただし、低い水準が続いてきた金利が今後、上昇に転じれば、延滞率が上昇する恐れもあり、また、借入金返済負担の増加により消費が抑制される可能性がある。その点では、家計信用の過度な増加は韓国経済にとって大きなリスク要因だ。
文在寅(ムン・ジェイン)政権では、不動産価格の安定化政策を幾度となく行ってきたが、十分に奏功していなかった。韓国メディアによると、最近、金融当局の指導により、一部の銀行が住宅ローンの新規貸し出しを一時中断したり、貸し出し規模を縮小したりしている。ただし、これについては「専門家は銀行の貸し出し規制のようなその場しのぎの措置では副作用が生まれるだけと指摘している」(「毎日経済新聞」電子版2021年8月24日)といった批判的な見方も出ている。
(百本和弘)
(韓国)
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