カナダ、2035年までにゼロエミッション車の販売を義務付け

(カナダ)

トロント発

2021年07月08日

カナダのオマー・アルガブラ運輸相とジョナサン・ウィルキンソン環境・気候変動相、スティーブン・ギルボカナダ民族遺産相は6月29日、2035年までに販売される新車(乗用車とピックアップトラック)のゼロエミッション車(ZEV)化を義務付ける方針を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

政府はこれまで2040年までに新車市場の完全ZEV化を自主目標として掲げてきたが、国際エネルギー機関(IEA)が5月の報告書で、2035年までに内燃機関搭載車(乗用車)の新規販売を停止しなければ、2050年までに温室効果ガスネットゼロの実現は不可能と発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2021年5月26日記事参照)ことに伴い、計画を前倒しで義務化した。

ZEV普及策として、政府は購入補助金制度へ5億8,700万カナダ・ドル(約522億4,300万円、Cドル、1Cドル=約89円)、充電インフラ整備に約4億6,000万Cドルと合わせて10億Cドル以上を投じてきた。しかし、2020年末時点の新車販売台数のZEV割合は3.5%にとどまり(「デロジエ・オートモーティブレポート」5月19日)、政府高官は割合を2025年までに10%へ高めるという政府目標を達成するには、現行の購入補助金制度では十分ではないと指摘していた(「グローブ・アンド・メール」紙6月29日)。

2040年の自主目標を5年前倒しで義務化することについて、アルガブラ運輸相は記者会見で「購入補助金制度の拡充や、ネット・ゼロ・アクセラレーター基金から80億Cドルを投じて自動車産業の産業移行加速を支援していく」とコメントし、これまでの投資だけでは不十分なことを認めた。また、ウィルキンソン環境・気候変動相は、カナダのZEV販売目標を米国カリフォルニア州など北米で最も厳格な地域の目標に合わせるとともに、米国と協力して性能ベースの温室効果ガス規制や温室効果ガス排出基準の統一化を行い、ZEV普及に努める考えを示した。

連邦政府の発表を受け、トヨタやホンダなどカナダ国内で生産・販売を行う世界各国の自動車メーカー15社から構成されるグローバル・オートメーカーズ・オブ・カナダ(GAC)のデービッド・アダムズ会長は同日、「政府とは、二酸化炭素を排出しないという最終的な目標は共有しているものの、今回の発表では、2035年までにZEV販売台数を100%にするための詳細情報が不足している。インフラ投資、製造業のサプライチェーンの強化、連邦や州政府との協調など、連邦政府とのさらなる協議を期待する」とコメントした(「GACプレスリリース」6月29日)。

また、カナダ自動車部品製造業協会(APMA)のフラビオ・ボルぺ会長も「(2035年の)ゴール地点にいるのは現政府や首相ではないからこそ、目標達成に向けた法制化は願望ではなく、理にかなったものでなければならない」とコメントし、国家的な自動車用電池戦略の策定や業界内でのパートナーシップ形成、さらに、政府による投資を責任を持って行うことの必要性を訴えた(「ウィンザー・スター」紙7月2日)。

(飯田洋子)

(カナダ)

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