落ち着き取り戻すも、困難抱える衣料品産業

(ミャンマー)

ヤンゴン発

2021年07月28日

ミャンマー商業省によると、国内の委託加工形態CMP(Cutting, Making and Packing)による衣料品製造事業者による原材料の輸入(2020年10月~2021年7月9日)が、前年同期比約31%減の約11億8,000万ドルとなった、と7月21日付の国営英字紙「グローバル・ニューライト・オブ・ミャンマー(GNLM)」が報じた。

この背景には、EU市場の需要低迷があると同省は分析している。2020年度の8カ月間(2020年10月~2021年5月)のCMP企業による衣料品輸出はこの影響を受けたとみられ、約22億ドルと、前年同期比20%以上減少した。

2月の政変で大打撃受けた衣料品産業

2月1日の国軍による権力掌握は、新型コロナウイルスで影響を受けていたミャンマーの主力産業の1つの衣料品産業にさらに大きな打撃を与えた。ジェトロによる同国業界関係者や進出日系企業へのヒアリングによると、2月から3月にかけて、治安悪化で工場に勤務するワーカーの出勤が困難となったことを受け、出勤率が20%~40%程度と下がり、操業が困難となった企業も出てきた。中国系縫製工場の中には、十分なワーカー確保が困難と判断してミャンマーから撤退を決めた企業も少なくないようだ。

しかし、水かけ祭り(4月下旬)以降はヤンゴン市内の治安状況は落ち着き、80~90%のワーカーが職場に戻ってきたという。半面、国軍による権力掌握後の混乱により生じた製品の納期遅れなどにより、ミャンマーへの発注をリスクと見なす各国企業がミャンマーへの発注を減少させたことから、5月にはワーカー数に見合う発注がないことを理由に、従業員解雇に踏み切る工場も出てきたという。また、5月以降、事業所の対応は二極化した。ミャンマーが落着きを取り戻しているという前向きな情報を発信し、発注元の理解を得ようとする側と、早々に工場閉鎖を決めてミシンの処分を始める側に分かれた。日本からの発注は、日本の5月の連休明けから徐々戻ってきたという。

欧州の企業では、スウェーデンのH&Mは3月に一時停止したミャンマーへの発注を5月に入って徐々に再開している(5月18日付ロイター)。その後、アイルランドのプライマークやデンマークのベストセラーなどの国際的なファッション企業が注文を再開し始めるといった情報もある(7月21日付GLMN)。こうした欧州系ブランドの動きを支えているのが、ユーロチャム(在ミャンマー欧州商工会議所)衣料品グループがミャンマー衣料品産業に向けて出したステートメントPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(5月)だ。ステートメントでは、ミャンマー産の衣料品の過半がEU市場向けであり、近年遂げられた急速な成長はミャンマーの経済発展に大きく貢献し、それによって貧困削減に効果があったと述べている。また、2月の国軍による権力掌握後でもミャンマーの衣料品産業を守るために関与を続けることを宣言する内容となっている。

(参考)2019年度の衣料品輸出は、過去最高の50億2,800万ドル。内訳は繊維衣料が37億7,700万ドル、ニット製品が12億5,100万ドル。輸出額は、2015年度と比較して約5倍に拡大した。ミャンマーの輸出全体に占める割合は天然ガスに次いで大きく、2015年度の7.3%から2019年度には28%と約3.8倍に拡大している。

(山岡寛和)

(ミャンマー)

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