キトピが国内3番目のユニコーンに、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2などから資金調達

(アラブ首長国連邦)

ドバイ発

2021年07月08日

クラウドキッチン事業を運営するアラブ首長国連邦(UAE)ドバイ発のスタートアップ・キトピ(Kitopi)がシリーズCラウンド(注)で4億1,500万ドルを資金調達した。クラウドキッチンとは、実店舗を持たないデリバリー専門飲食業のビジネスモデル。1つのキッチン施設を複数ブランドが共有することで、家賃や人件費などのコストを抑えられるのが特徴だ。

ソフトバンクグループのソフトバンク・ビジョン・ファンド2がリードインベスターを務め、フォロー出資者として、アブダビや欧米の投資企業、ベンチャーキャピタル(VC)6社が名を連ねた。今回の資金調達での企業評価額は公表されていないが、同社は地元メディアの取材に対して、10億ドル以上と明らかにしている。

2018年1月にドバイで創業したキトピは、飲食ブランドから依頼を受けて、オーダーの受注から食材調達、調理、配達までを代行する。一連の業務を効率的に行うシステムを開発し、食材などの調達コスト削減、調理・配達時間の短縮を実現。UAEとサウジアラビア、クウェート、バーレーンで60以上のデリバリー用フードのキッチンを運営している。

同社の最高経営責任者(CEO)のモハメド・バーラウト氏は、ビジネスニュース専門放送局CNBC(6月29日)で、「新型コロナウイルスの感染拡大が消費者のフードデリバリー利用を大幅に後押しした」と述べた。ドバイではデリバリーのみを提供する飲食事業者が増えており、米国ニューヨークの有名ホットドッグ店「Nathan’s Famous」は2020年9月にキトピを活用してドバイに進出。実店舗を持たず、キトピのクラウドキッチンを利用して、デリバリー販売のみを行っている。

同社はUAEで3例目のユニコーン企業となった。最初の事例は2016年のECサイト運営のスーク・ドット・コムで、翌2017年に米アマゾンが買収してエグジットした。続いて、2016年にライドシェア事業のカリームが楽天らから資金調達してユニコーン企業となり、2019年には米ウーバーテクノロジーズが買収し(2019年4月4日記事参照)、同じくエグジットを達成している。

(注)スタートアップ企業で、既に複数回の資金調達(シード、シリーズA、シリーズB)を経験し、経営が安定化した後、さらなる成長を目指して行う資金調達。

(山村千晴)

(アラブ首長国連邦)

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