ウーバーがドバイの競合配車スタートアップを買収

(アラブ首長国連邦)

ドバイ発

2019年04月04日

ライドシェア世界大手の米国ウーバーテクノロジーズは3月26日、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ発の配車サービス大手カリームの買収を発表した。買収額は31億ドルで、そのうち現金は14億ドルで残り17億ドルは転換社債。転換社債は1株55ドル相当の価格でウーバー株に転換できると報じられている。これは、中東におけるテクノロジー関連スタートアップの買収としては過去最高となる。カリームが事業展開している各国政府の許認可などの都合から、買収の完了は2020年第1四半期を見込んでいる。カリームはウーバーの100%子会社となるが、引き続きカリームのブランドを使い続け、ムダシル・シェイカCEO(最高経営責任者)は引き続きその地位にとどまる。

カリームは2012年にドバイで設立され、その後、中東・北アフリカおよびトルコ、パキスタンなど15カ国100都市以上で事業を展開しており、ドライバー登録数は100万人以上。ウーバーは同地域において10カ国以上で20以上の都市・地域に参入しているが、対象地域は首都や最大都市などに限られている国が多い。また、カリームはオンラインフードデリバリーや決済関連のサービスも展開し始めており、ウーバーはそれら全てを傘下に収める。

カリームには、楽天を含む域内外の投資家が出資し調達額は8億ドルに達しており、2018年には20億ドルの評価額を得ている。2017年にeコマース企業スーク・ドット・コム(Souq.com)が5億8,000万ドルでアマゾンに買収されて以降は、ドバイ発のスタートアップとしては唯一のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のスタートアップ企業)と認識されていた。ドバイ発のスタートアップとしては初めての10億ドルを超える買収となったことで、ドバイのムハンマド・ビンラーシド・アールマクトゥーム首長はイノベーションが「砂漠」で活気づいていることを証明したとツイートし、専門家らは「UAEがインキュベーターとして効果的に機能していることを証明した」としている。

中東・北アフリカ・トルコ・パキスタン地域は、20カ国3億8,000万人の都市人口を有しており、地方を含めると人口は7億人に上る。同地域の現在のライドシェアの市場規模は100億ドルから120億ドル規模といわれているが、公共交通機関の発展していない国が多い同地域では、急速な人口増加とともに、ライドシェアのニーズも拡大していくと見込まれており、ウーバーとしては新規株式公開(IPO)を見据え、成長市場を取り込んだかたちだ。

(山本和美)

(アラブ首長国連邦)

ビジネス短信 a9007066e6009f8b