バイデン米大統領、トランプ前政権が廃止したメタンガス排出規制の合同決議案に署名

(米国)

ニューヨーク発

2021年07月06日

米国のジョー・バイデン大統領は6月30日、石油・ガス産業などからのメタンガスの排出を規制する合同決議案に署名した。メタンガス排出規制はオバマ政権時の2016年に制定されていたが、トランプ前政権は2020年9月にこれを廃止した。連邦議会与党・民主党は今回、連邦議会の前会期終了から60議会日前までに最終化された規制について、上院ではいわゆるフィリバスター(議事妨害)(注)を排除して単純過半数で可決できるという議会審査法(Congressional Review Act)の仕組みを利用して、同規制を復活させたかたちだ。なお、下院では賛成229票、反対191票(棄権10票)、上院は賛成52票、反対42票(棄権6票)だった。

温室効果ガス(GHG)に占めるメタンガスの割合は約10%にとどまるものの、二酸化炭素(CO2)の約25倍の温室効果があるとされており、削減による温暖化抑制効果は相対的に大きい。同規制では、石油・ガス産業などに対して2025年までにメタンガスを34万~40万英トン(CO2換算で770~900万トン、1英トン=約1,016キロ)削減することを課し、2025年までに2012年比で40~45%減らすことを目標としていた。こうした措置により、1億2,000万~1億5,000万ドル相当の気候変動対策コストが軽減できると試算されていた(2015年8月28日記事参照)。

バイデン大統領は合同決議案署名後に、「超党派のインフラ計画(2021年6月25日記事参照)には、数百万の放棄された、またはメタンガス漏出のある石油井や天然ガス井を制限するための210億ドルもの環境修復予算が含まれている」と述べ、同計画の意義を訴えた。

今回の合同決議案の成立について、米国石油協会(API)は「石油業界は、(メタン排出量削減につき)費用対効果の高い政策について、共通の見解を見いだすことに取り組んでいる」とコメントしている。環境団体クリーンエア・タスクフォースの分析外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、既存の技術を利用すれば、2025年までに石油およびガス部門からのメタン排出量は2012年比で65%削減できるとしているが、環境保護庁(EPA)は今回の規制復活の決議を踏まえ、2021年後半に詳細な行動計画を発表予定としている。

(注)上院では通常、法案可決にはフィリバスター(議事妨害)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。ただし、歳出・歳入・財政赤字の変更に関する法案については、財政調整措置(リコンシリエーション)を利用することで、単純過半数での可決が可能。

(宮野慶太)

(米国)

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