ユニリーバが今後4年間で55億ペソの投資計画を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2021年07月06日

英国の食品・家庭用品大手のユニリーバは7月1日、今後4年間で55億ペソ(約308億円、1ペソ=約5.6円)をメキシコで投資すると発表した。同発表は、タティアナ・クルティエール経済相の立ち会いの下で、ユニリーバ・メキシコ・ノースラテンアメリカのレジナウド・エクリサート(Reginaldo Ecclissato)社長により行われた。ユニリーバは、メキシコ州のレルマ市とトゥルティトラン市、モレロス州クエルナバカ市、首都メキシコ市に4つの工場を持ち、食品や洗剤、パーソナルケア用品などを生産している。今回の投資は4工場の拡張に用いられ、直接・間接含めて新たに3,000人の雇用が生まれる。

エクリサート社長は「メキシコは26カ国に美容品やパーソナルケア用品を輸出する重要な拠点で、今回の投資は、これらのブランドの革新に向けたインフラの強化に用いられる」ことを明らかにした。ユニリーバは2018~2020年にも40億ペソの投資を行っており、クルティエール経済相は記者会見で、生産拠点としてのメキシコとメキシコの労働者に対する同社の大きな信頼に感謝する、としている(経済省プレスリリース7月1日付)。

外国企業の対内直接投資は堅調もメキシコ企業は対外投資を増やす

経済省が5月20日に発表したデータによると、メキシコの2021年第1四半期の対内直接投資額は118億6,400万ドルで、前年同期の当初発表額と比較すると14.8%の増加になる。対内直接投資は堅調といえるが、総額の59.2%を利益の再投資が占め、新規投資は増えていない。他方、中央銀行によると、メキシコ企業の対外直接投資は第1四半期に前年同期比2.36倍の13億9,560万ドルに達した。2018年12月にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール現政権が発足して以降、民間部門の投資は低迷しているが、特にメキシコ企業による投資の落ち込みが目立ち、逆に外国市場への投資が増える傾向にある。

メキシコ工業団地協会(AMPIP)が2021年6月30日に発表した工業団地デベロッパーへのアンケート調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2021年5月27日~6月14日に実施)によると、投資家がメキシコへの投資を検討する際の障害となっている問題として、73%が「治安・社会的リスク・暴力」、70%が「法規の信頼性・法の支配」、67%が「電力供給不安・コスト増・エネルギー部門の近代化」を挙げている。治安を問題視する声は前年調査から3ポイント低下したが、法規の信頼性に関しては8ポイント、電力に関しては35ポイントも上昇している。この背景には、2021年に入って相次いで公布されたものの、司法の判断で適用差し止めとなった電力産業法改正(2021年3月22日記事参照)や炭化水素法改正(2021年5月18日記事参照)など、現政権が進める国営企業優先のエネルギー政策が問題視されていることがあるとみられる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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